自由学園明日館。
その建物は、池袋駅から徒歩十分…
ビルヂングの谷間にひつそりと建つてゐる。
んー…というか、大正時代の建物なんで、
まわりの建物はあとからにょきにょき生えてきた新参者。
竣工当時まわりはなんにもなかったとか伝え聞く。
んだが、いつみても
新参者、闖入者は、このライトの建てた建築の方のような気がする。
タイムトラベルかなんかで、大正モダニズムの建築が
現代東京にむりやり突っ込まれた、かのような奇妙な感覚。
なぜかな。
だが考えてみると、ライトの作品皆が皆
闖入者的性格を持っていることに気づく。
かの落水荘しかり、ジョンソンワックスの本社ビルしかり、
ニューヨークのグッゲンハイムミュージアムしかり、
むろん、実物はみたことないのだけれど、
かの日比谷の帝国ホテルもきっとそうだったんだろう。
ごく個人的な感想・感覚をここに述べさせていただくならば、
ライトの「帝国ホテル」っていうのは、
久生十蘭の「魔都」の舞台であり、
二・二六事件のおり、(帝国陸軍における闖入者)石原莞爾が
反乱軍の首魁どもに会いにいったその舞台でもある。
なにか「建築」っていうよりも「ブンガク」世界に属する
夢幻の場所、間、空間……
そんな感じにまでムクムク膨れ上がってしまっている。
……………
と、さて、
自由学園はそんな陰謀とは無縁の
クリスチャン、羽仁もと子、羽仁吉一夫妻が設立した
女の子向けの学校なんである。
とかなんとか言って、偉そうに、
ようするに最近お気に入りの
AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR
で、何か撮りたくてたまらんので出かけたんである。
ここが入口。
正方形型のドアがくっついているが、
これもライトのデザイン(たしか)
見学料400円。
喫茶付600円。
喫茶付だと、ホールでお茶・コーヒーが飲める券がついてくる。
はじめにいってしまうと、断然喫茶付のほうがよい。
とにかく自由学園の中央棟ホールは最高ですんで、
「たった200円で、最高の空間でお茶がのめる」
と考えた方がよろしい。200円ケチるべきでは、絶対にない。
そうそう、1999年~2002年の修復工事直前にも
僕は、ここ、行ったことあるんですが、
その頃は見学料とかとっていなかった。
商売っ気ゼロ。というか、
「もう、このボロ屋、壊しちゃおうか」
くらいの雰囲気が漂っていたことを思い出す。
ま、そのあたりのことは…修復工事以前のことはそのうち触れるとおもう。
ま、ともかくさっさと中に入りましょう。
この建物はエクステリアは正直、パッとしない。
(通好みの、スゲェ……という部分がいくつかあるが、たぶんわかりにくい)
この建物はやっぱインテリアですよ。
中身で勝負ですよ。
ペラペラのドアをくぐり抜けます。
ほんとペラペラです。
薄くて、軟くて、頼りない。
このペラペラのドアを開ける瞬間、
「ああ、自由学園きたな」
って感じがする。
修復前もペラペラだったし、
修復後も「あくまでオリジナルに忠実に」ペラペラなんである。
ほんと繊細なドア(理由はわからん、というか極端なはなし、いらない)
NFL(アメフトね)の選手なら、小指一本で壊せそうな気さえします。
教室。
んー…
誰も生徒がいない学校って、なんか不気味なものだけれど、
この自由学園に限っては違う。
たぶんここの生徒は…
まっ白な制服に、三つ編みのおさげの大正・昭和の女の子たちは
今、たまたま食堂でご飯を食べているか、
校庭で、なにか花か空のスケッチをしている最中なのだ、
今にもワイワイ・ガヤガヤと戻ってきそうな気がする。
11月。
秋に行って良かったな、と思う。
春か、秋でしょう。ここは。
↑中央棟東教室。
なんか黒板もデザインの一部にスッとおさまっている。
えー、教室を一つ二つ巡り…気分を盛り上げ、
↓われわれはここにたどり着く。
最高の建築空間。
なんか勝手に盛り上がってますが、仕方ない。
中央棟ホール。
この小さな画像でどれだけのものが伝えられるものか、
すこぶる頼りないんだが……
ローコストだな、ということはわかりますよね。
ふつうステンドグラスって、色ガラスとか、凝った模様とか、絵とか、入ってますが、
そういうのは一切ないっす。
それでこれだけのことができる。
これだけ「光」「空気」の操作ができる。
↑この…ぴったし決まった、角、コーナー…
窓の隅の柱の処理も隙がない…
「建築の良し悪しを判断するには、ディテール、角っこ、隅っこを注目せよ」
と、僕は偉そうに言うんだが、
建築学科を卒業しただけで実務経験なしの僕は偉そうに言うんだが、
これはいい仕事してますよ。
椅子の背もたれの隅っこの処理。
ピチッとした処理にも注目。
要するにですな…
「アメリカナンバーワン建築家と日本の職人仕事のコラボが
このローコスト建築の傑作を生んだ……」
まあ、今風の広告業界的ボキャブラリーを使って言うとそんな感じですか。
ホールの北側。
この石の部分が、「ライトだねぇ」という感じ。
ヒッチコック作品で、ヒッチ本人が必ず登場するあのシーン。
あるいは小津作品における「赤いやかん」「不在の階段」。
ポルシェ911における、カエル目のヘッドライト。
そんなのと同様、
この石と照明器具の組み合わせは「ライトだねぇ」と、言うより他ない。
ちょっと前書きました通り、
600円で、お茶、コーヒーをいただくことができます。
もう…たまらんです。
たった200円追加で良いのですか?
この空間。
この窓。
そして青空。
あ。そうだレンズのはなしを忘れてた。
16-35㎜ニッコール、やっぱし、建築写真にも良好。
良く晴れてた、ってこともあるが、
照明のあんまりない建築空間の描写にも向く。
どの画像もスピードライトは使ってません。
なんか書きまくってしまった。
その2に続く。
中央棟ホールをあとに、食堂へ。