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市川崑「金田一耕助の事件匣」 感想

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石坂浩二主演の金田一シリーズ、
DVDのBOXセットです。

自分が契約している
「日本映画専門チャンネル」というやつで
「市川崑特集」というのをやってまして、

で、「犬神家の一族」「女王蜂」
これは録画して見たんですけど、他のは見逃しまして――

で、気になって仕方ないので、購入にいたりました。



「悪魔の手毬唄」「獄門島」「女王蜂」「病院坂の首縊りの家」
+特典ディスク

なので、「犬神家」は入っていないです。

ジャケットはこんな……↓↓
えー、安っぽいな……

なんかエロビデオみたいなレベルだ……


ついでに??
横溝正史の原作も読みました。
(病院坂はまだです)

で、「映画」と「文学」の違いとかいろいろおもったりしたので、
そのことなど、書いていこうとおもいます。

はじめに書いておきますと――

小生、
「日本映画の絶頂期は1930年代である」
「探偵小説の絶頂期もやっぱり1930年代である」
などとおもっていますので、

そこから時期が外れている市川崑、そして横溝の金田一モノは、
「一流」
ではないとおもっています。

二流、ではないにしても、
1.5流くらい? かな??

いや……でも、楽しい体験でした。




以下、感想をば。

①横溝正史=市川崑=近親相姦モノ

市川崑の金田一モノ、というと、
金田一耕助(石坂浩二)にはじめて原作通りの格好をさせた――

原作に忠実な金田一モノ、
というのが、ま、よくいわれることですけど。

でもそれ以上に気になるのは……
横溝、市川崑、この二人がそろって「近親相姦モノ」の作者だということです。

横溝=近親相姦はわかりやすい。
「悪魔の手毬唄」
は、近親相姦の禁忌をめぐって殺人がおこり、

「悪魔が来たりて笛を吹く」
は、兄妹の近親相姦から生じた悲劇の物語、です。

でも市川崑もそうなんですよね。
「おとうと」
――岸恵子と川口浩のラブラブ姉弟。

「太平洋ひとりぼっち」
――石原裕次郎と浅丘ルリ子のラブラブ兄妹。

横溝も市川も、そろって男女の正常な愛は描けない。(描かない?)
あたたかい感情が通い合うのは家族の間だけ。

で、このBOXセットもやっぱりそうで、

この世界には
母=娘パターンのラブシーンがあるだけです。

「病院坂」の佐久間良子と桜田淳子ですが、


完全にラブシーンです。

横溝=市川の世界において
男―女は暴力的に結びつくか、すれ違うか、しか、ないわけです。
(上に述べたように兄妹、姉弟のみが例外である)

(――んーというか、「細雪」の古手川祐子とか、
市川崑が若い女優さんに青いセーターを着せたがる理由はなんなのだろう??)



「手毬唄」の岸恵子&仁科明子も
疑似・母娘みたいな感じでしょうか。

殺人者&被害者の要素もあり、ラブシーン要素もある。



そして「獄門島」の
司葉子&大原麗子

母娘ラブラブシーン。



で、「女王蜂」
岸恵子&中井貴惠

疑似・母娘ラブシーン。



セリフもたしか
「どうして急にいなくなったりしたの?」
「どうして九十九(つくも)のところに行ったりしたんです?」

とかいってますので、ラブシーンしてます。



②横溝正史≠市川崑

市川崑が
横溝作品のどこを削って、どこを改変して
映像作品に変えていったか?

それをこまかくみていくと、いろいろ勉強になりそうですが、
ちとキリがなくなりそうなので一点だけ。

「獄門島」の、
金田一と鬼頭千万太との関係です。

「獄門島」はこの千万太の遺言をめぐって動くはなしなのですが、

原作は、金田一と鬼頭千万太は「戦友」で、
千万太の死を看取り、
千万太の遺言を直接金田一が聞いています。

ところが……
市川版「獄門島」は、
金田一と千万太の関係が間接的になっています。
名前は忘れちゃったんですが、
なんとかいう男から聞いた話、ということになっている。


わたくし、
横溝の原作を読んでから、市川作品をみたので、
この点、がっかりしたのですが……

BOXの特典ディスクをみて、市川崑の意図はわかりました。

市川崑にとって
「金田一耕助=神」
の構図があるようです。

つまり、「神」である人が、
徴兵されて、戦場に行って、戦友の死を看取る、
……これはおかしい、という意味での改変だったのでしょう。

まとめると、
横溝・金田一=俗人
 パトロンがいて、住む場所も決まっていて、学歴も明らかである。
 そして軍隊経験もある。
市川・金田一=神
 どこに住んでいるかわからない。経歴不明。
 ただし、探偵料・諸経費はきちんと依頼人からもらう。

このあたりに「文学」と「映画」の差がありそうです。

③小津リスペクト

市川崑が小津安二郎をどうおもっていたのか?
評価していたのか?
そのあたりよくわからんのですが、

こうも立て続けに小津作品のヒロインを殺人者にするというのは??

・高峰三枝子(「戸田家の兄妹」)


↓↓ はい、もちろん「犬神家」の殺人者です。

(この画像は「女王蜂」からとりました)


・岸恵子(「早春」)


↓↓

「悪魔の手毬唄」の殺人者。


・司葉子(「秋日和」「小早川家の秋」)


↓↓
「獄門島」の殺人者


んー、以上。
ですね。

「それは単に小津がヒロインに使った女優が、市川崑の金田一モノの時代にちょうど脂ののった大女優になっていた、それだけのことじゃないの?」

ともおもえますが、

・佐分利信(「戸田家の兄妹」以降、小津作品の常連)


↓↓
「獄門島」の殺人者。


さらに……
「秋日和」で共演した 司葉子と一緒に死ぬ……


そして、そして、

・佐田啓二(小津安二郎と親子のような関係があった男)


↓↓

・中井貴惠(佐田啓二の長女。小津安二郎が孫のようにかわいがっていた)

を「女王蜂」のヒロインに起用する――……


となると、もう完全「小津リスペクト」としかおもえない。

しかし、こう並べてみると、お父さんに似てるな~
中井貴一はそれほどでもないが。

④大原麗子&坂口良子

感想これで最後ですが……

大原麗子、坂口良子、
どっちも、

「名前はきいたことがある」程度の認識しかなかったのですが、



うわー、こんなきれいな女優さんがいたのか……
と知りました。

坂口良子、かわいい。
というか、


この子のやってる床屋さんならぜったいに行きたいよな。

「いつもお客さんがいない」という設定、
説得力ゼロ……
















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