Quantcast
Channel: トトやんのすべて
Viewing all articles
Browse latest Browse all 593

「学生ロマンス 若き日」(1929)感想 その5

$
0
0

①「若き日」=ぐるぐる映画
という公式が確認できましたので、
つづきまして、

②小津映画おきまりのヴォキャブラリー

これをみていこうとおもいます。
現存最古の作品においても、小津は小津であった。
おっそろしいほど首尾一貫した男であった、ことがわかるとおもいます。

〇カフェの窓際

が、まず出てきます。
あと、鳥籠というのもおなじみのモチーフ。


カフェの窓際というと……

「麦秋」(1951)の原節ちゃんと二本柳寛 ですかねー
あとは……

「淑女は何を忘れたか」(1937)の
桑野通子&佐野周二も忘れちゃいけない。↓↓

「若き日」(1929)から10年も経っていないのですが、
トーキョーのカフェはここまで進化したわけです。

テーブルも椅子もクローム鋼管でおしゃれ。
(ただ、戦前のこの手の家具はすぐ壊れたらしい、ときく)
ヒロインも桑野ミッチーなので、
「若き日」のアレの数千倍美しい。




〇引っ越し

というのもよくでてくるモチーフ・テーマ。
いちいち例はあげませんが。



そして
〇「玄関」
あるいは
〇「日本建築の空間の特殊性」
と呼び換えてもいいか??

「若き日」では
ヒロインの部屋を訪ねていった結城一郎が、
ヒロインが留守だと分かった瞬間、
脱ぎかけていた靴を また履きなおすというシーンがそれ。↓↓




ハリウッド映画に学んだ小津安二郎がまずぶちあたったのが、
西洋の空間構成と 日本の空間構成の違いであったようです。

具体的にいや、「畳の上の生活をどう描くか?」
「靴の脱ぎ履きをどう処理するか? あるいは無視するか?」
といったもの。

ハリウッド作品をいくら目を凝らして見ても、
この問題の答えは得られない。
自分で考えるより他ない。

で。どうするか?

色々な方法があるかとおもいますが、
小津安っさんが得た結論というのは――

「玄関でなにかが起こる」
という方法のような気がします。

一番分かりやすいのは「東京暮色」(1957)
原節子&山田五十鈴の母子対決シーンですかね。↓↓

あと「早春」(1956)
淡島千景がダンナの浮気相手の岸恵子と対決(?)するところ、とか。

「晩春」(1949)
原節子が愛する父の再婚相手(と周囲が騒いでいる)三宅邦子と対決(?)するところ、とか。

とにかく小津作品は「玄関でなにかが起こる」のです。




つづいて
〇お着替えシーン

んー、というか、昔の靴下、
めんどうくさそうだ……


お着替えシーンは小津作品に山ほど出てきますが、

「戸田家の兄妹」(1941)
の佐分利信&高峰三枝子といい……




「晩春」(1949)
の笠智衆&原節子といい……

のちのちの小津作品では
近親相姦的な やばい二人を表現するのに用いられるシーンとなります。




〇電車・汽車 

これは説明の必要はないでしょう。
ヴィム・ベンダースは「東京画」で
電車・汽車の登場しない小津映画は存在しない、と語っています。




〇パイプ

というのもよく出てくる小道具。

後年の「麦秋」(1951) 「秋日和」(1960)で話題に出てきます。





〇「ドンキホーテ」
というと……



「淑女は何を忘れたか」(1937)
ではセルバンテスというバーが登場します。↓↓




〇ビール瓶
というのも良く登場する小道具。




あまりに多く登場しますので……
とりあえず「麦秋」(1951)の画像をば。↓↓

ここではキリンビール。とくにメーカーのこだわりはないような気がする。

そういや「出来ごころ」(1933)の喜八さんは
ビール工場勤務でしたな。



〇「いいお天気」

これまた頻出するセリフ。
ヒロインが空を見上げると――「まあ、いいお天気」
というに決まっています。

この伝統は「若き日」からすでに始まっている。



〇お見合いの写真

というのも良く出てくる。




なんつっても「麦秋」(1951)の
「ナベ」さんですかね。40歳のイケメンビジネスマン。

一度も画面上に登場しませんが。ね。



えー、さいご……
これはおもしろいモチーフです。

〇ストーブ&やかん




↓↓まん中に写ってるのは 笠智衆ですが……



非常に興味深い……

というか、不思議なのは、

「やかん」&「ストーブ」とくると、
かならず悪女が登場する。
という点です。

まずは「東京の女」(1933)↓↓

江川宇礼雄&田中絹代のかたわらに
やかん&ストーブ



「東京暮色」(1957)
山田五十鈴&有馬稲子のかたわらに
やかん&ストーブ



はい。で、おわかりのように

「若き日」(1929)
→ブスいヒロインが結城一郎&斎藤達雄をたぶらかす。

「東京の女」(1933)
→岡田嘉子がアカの売春婦だとわかり、弟の江川宇礼雄が自殺する。

「東京暮色」(1957)
→山田五十鈴が家族(笠智衆、原節子、有馬稲子)を捨てて、失踪する。

というおはなしなわけです。

んーしかし、こうやって比較してみても……

山田五十鈴……岡田嘉子……

あのブスいヒロインはどうにかならなかったものか??
と悔やまれます。
小津安っさんは美女しか撮ってはならんのです。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 593

Trending Articles