その2です。
えー
重大な論理の欠陥に気づいてしまいました……
「晩春」なのですが……
広津和郎「父と娘」なる短編が原作なのですね……
ということは、「気学に凝っていた」のは広津和郎なのか??
さっそく、
原作を読んでみようとおもったのですが、「父と娘」 どうも全集に収録されていないらしく――
読みたくても読めない。(国会図書館へでも行けば別??)
逆に言えば、その程度の……
全集に収録されないレベルの作品なのか??
しかし、
「晩春」――「父と娘」とまったく別モノ
というのをどこかで読んだおぼえもあるし……(広津がそう書いていた)
ああ、わからん。
ああ、じれったい。
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もとい、
ようするにトマス・ピンコの野郎がなにを考えているのか? というと、
野田高梧×小津安二郎コンビは
シナリオ書きの土台に「気学」を使ったのではないか? という推測なのです。
前回、みましたが……
「電気屋さん」という登場人物は 「気学」の三碧木星から着想を得たとしかおもえませんし
(三碧木星は「易」でいうと、☳・震。これは雷です。電気ビリビリです)
「奈良漬け」という小道具も 五黄土星からきているのではないか としかおもえない。
しかも 語られる物語は
なんとなく好意を持っていた
紀子(原節子)&服部(宇佐美淳)のカップルの関係が終わる。
毀れる。
といういかにも五黄の作用です。
(五黄=破壊、腐敗の意味)
これはどう考えても「気学」でしょう??
この「気学」要素が広津の「父と娘」由来のものなのか?
それとも野田×小津のオリジナルなのか??
他の紀子三部作
「麦秋」「東京物語」をこまかく見ていけばあきらかになるか?
ともおもうのですが……
今「八犬伝」読みたいんだよな~
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もとい、つづき。
〇七赤金星の日
七赤金星の日には、どんな人が訪ねて来たり、どんな話が出たり、又どんな事が起ったりするか?
1、少女が訪ねて来る(七赤は兌の少女)
2、食物や金銭の話が出る(七赤は兌の口、兌の金銭である)。
3、遊びや宴会の話が出る。
4、異性関係の話が出る。
5、天候は快晴でない事の方が多い!
(東洋書院、波里光徳編「気学問答集 第一巻」34~35ページより)
これもすごいです。
「晩春」のシナリオ、こわいくらい「気学」してます。
S50
紀子(原節子)はまさ叔母さん(杉村春子)の家に遊びに来ています。
紀子「ブーちゃん……」
勝義「……」
紀子「ブーちゃん、どうして野球しないの?」
勝義「乾かないんだよゥ、エナメル」
紀子「何のエナメルさ」
勝義「バットだよゥ」
紀子「ああ、赤バットにしたのね」
はい。もうおわかりですね。
赤バット→「赤」→七赤金星
でも、これでは終わりません。
エナメルが妙に気になったのでかんがえてみた。
……すると、わかりました。
エナメル→七宝!!
「七」ですよ、奥さん……
(↑女性の足、ストッキング、汽車ポッポ……小津・ヒッチコック 東西の両巨匠がそろって足フェチだとは……)
さらに恐ろしいのはこれ↓↓……
ブーちゃんの背中に
1……6……
深読みしすぎ??
なんでしょうか??
1+6=7
7!!
はい、おつぎ。
〇八白土星の日
八白土星の日には、どんな人が訪ねて来たり、どんな話が出たり、又どんな事が起ったりするか?
1、仲介人・周旋人・相続人・肥った人・強欲な人が訪ねて来る。
2、継ぎ合わせた物や積み重ねた物を買ったり、持ち込まれたりする。
3、天候は変わり易い!
(同書35ページより)
(もう!! 足の裏を写すぅぅ……)
まさ叔母さん(杉村春子)が紀子(原節子)にお見合いを勧めます。
S52
まさ「ううん、ね、あんたもそろそろお嫁に行かなきゃならない時だし……」
紀子「ああ、そのこと? いいのよ、叔母さん」
まさ「よかないわよ、おすわんなさいよ」
紀子「――?」
まさ「実はいい人があるんだけど、一度あんた会ってみない?」
結婚の仲介。
さらに……
お父さん(笠智衆)にも縁談がある、という……
まさ「あの人も、いいお宅の奥様だったんだけど、旦那さま亡くして、子供さんもいないし、気の毒な人なのよ。ねえ、どうかしら? ――しっかりした人だし、好みもいいし……」
継ぎ合わせた物や積み重ねた物を買ったり、持ち込まれたりする。
……というやつなのでしょう。
そして
S67
アヤちゃん(月丘夢路)の豪邸で
ショートケーキが登場します。
どこかで買って来たのではなくアヤちゃんお手製のもの。
アヤ「ちょいと手が放せなかったのよ。ショートケーキこさえてたの。バニラ少し入れすぎちゃった。でもおいしいわよ」
(背景にちらっと写っている東郷青児の絵。たぶんホンモノでしょう。小津作品ですから……)
はははは。
ショートケーキ=積み重ねた物。
小津×野田コンビのしこんだ暗号、すごいです。
ショートケーキ=三輪さん(三宅邦子)
というわけですか。
いや、考えてみるとアヤちゃんもバツイチか……
継ぎ合わせた物や積み重ねた物……
奈良漬けといい、
さっきのエナメル(七宝)といい、
ショートケーキといい、
小津作品に登場する小道具類はすべて、なにか暗号を秘めているんじゃないか?
そんな気がします。
おつぎ。
〇九紫火星の日
九紫火星の日には、どんな人が訪ねて来たり、どんな話が出たり、又どんな事が起ったりするか?
1、火災保険の話が出たり、勧誘員が来たりする。
2、警察の呼び出しがあったり、臨検があったりする。
3、税務の話が出たり、税務署の調査があったりする。
4、学者・知者が訪ねて来たりする。
5、天候は快晴の事が多い! 時には九紫の裏の一白の雨の事もある!
(同書35~36ページより)
S74
鶴岡八幡宮の境内にて
お巡りさんが登場します。
警察の呼び出しがあったり、臨検があったりする。
S75
ニヤニヤしてる原節子。↓↓
お見合い相手の佐竹さんが相当にいい人だったらしいです。
マニアックなことを書いてしまえば、S67 ショートケーキのシーンと一緒に撮ったんでしょうねえ。
原節ちゃんの体の角度といい、背景の位置といい、ほとんど同じですね。
(ほんのちょっと違うのがおもしろい。S75のほうがレンズと被写体の距離が近い)
注目したいのは「ゲーリー・クーパー」
アヤ「その電気屋さんクーパーに似てる?」
紀子「うん、とてもよく似てるわ」
アヤ「じゃその人とクーパーと似てるんじゃないの! 何さ!」
「クーパー」続きます。
いや、クーパーというより重要なのは「クー」です。
S76
まさ叔母さんは 佐竹さんのことを「クーちゃん」と呼ぶことにする、とかいってます。
まさ「そうなのよ、だからあたし、クーちゃんと云おうと思ってるんだけど……」
周吉「クーちゃん?」
以前、僕はこの「クーちゃん」をこのように分析したのですが……
①小津作品において 「食べる」「食う」(クー)行為は 家族同士でしか行われない。
→すなわち佐竹(クーちゃん)と紀子は結婚するという暗示。
②「食べる」「食う」(クー)は性的なメタファーである。
→これまた佐竹(クーちゃん)と紀子の結婚を暗示。
さらに三番目の理由も出てきそうです。
③「クーちゃん」の「クー」は九紫火星の「九」である。
まったくどこまで凝ったシナリオなのでしょうか、「晩春」は…………
今回はここまで。
まとめますと、
〇七赤金星の日→赤バット、エナメル(七宝)
〇八白土星の日→縁談がもちこまれる。積み重ねた物(ショートケーキ・三輪さん)
〇九紫火星の日→お巡りさんの登場。クーちゃん。(食う、九)
その3につづく。