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羽二重餅騒動に関するご報告

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いやぁ、羽二重餅である。

この、福井だか金沢だか、あのあたりの特産のお菓子であるらしいのだが、

これがまた大変な騒動を巻き起こしてくれたわけです。

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ことの発端は、うちの玄関にこの(↑)羽二重餅が

落っこちていたことにはじまります。

どうやら僕の乳が…じゃなかった父が、

職場の同僚からもらってきたのをポケットに入れたままにし、

そのまま、カギやら財布やらを玄関でがさごそやったために

玄関にこの羽二重餅が落ちてしまったらしい。

だが、そのあたりの因果関係はどうでもよいのです。


重要なことは、この玄関に落ちていたお菓子を僕の母が食べた結果、

「まぁ、おいしいんじゃない」という程度ではなく、

「なんなの、これ?え?なんですか?え?え?一体これはなんなの?」

という程度の、

ま、一種のカルチャーショック的な衝撃を与えてしまったということです。


で、けっか、

「これはたくさん取り寄せてたらふく味わってしまおう。ウヒヒヒ」

ということになるのは、当然のなりゆき。

急性羽二重餅中毒になってしまった母は息子を

…つまり、僕を「これ、参れ」と呼びつけたわけです。


「これ、息子、この銘菓をインターネットとやらでただちに取り寄せなさい」

「はい。この…羽二重餅、ですか」

「そうじゃ、早う、とりかかりなさい」

「はい。して、手掛かりは?」

「ぬ。手掛かりとな」

「ええ。ですから、生産している会社の名前ですとか、住所ですとか、ホームページのアドレスですとか…」

「ぬ。そんなものわかるか。あるのはこれだけじゃ」

と、羽二重餅の包み紙をポンと投げて寄こしました。

「ん…これはなんと読むものでしょうか、母上…」

「林…内…リンナイ製菓…であろうかの??」

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まあ、すこぶる頼りない情報だという予感があったわけなのですが、

日頃、生活費など一銭も家に入れずに完全パラサイト人生を送っていることに

引け目をちょっと感じていることもあったりした僕は

仕方なしにググってみることにしました。

結果は、案の定、わからない。

やってみればすぐにおわかりいただけるが「林内」とやったりすると

ガス器具の会社のリンナイの情報ばっかりゲットできてしまうのである。


「母上、まこと申し訳ありませぬが」

「ぬ」

「これだけではやはり皆目わかりませぬ」

「左様か」

「ここはひとつ、例の『リンナイ』にはこだわらず、別の製菓会社のものをお取り寄せになればいかがか、と…」

「ぬ」

「どうやら、松岡軒とやら申す菓子店が、『うちは元祖羽二重餅である』などと主張している模様でございます。母上にはぜひこの羽二重餅をご賞味いただければなどと愚考いたしまする」

「ぬ」

「拙者が悪いのではございませぬ。この『リンナイ』とやらが、あまりに商売っ気がないのが悪いのでございます。普通はですね…」

「ぬ」

「普通は個別包装のパッケージに会社名だの住所だのをちょっとくらいは印刷しておくものでございます。しかるに、この包装のそっけなさときたら」

「ぬ、ぬ…」

「ですから…」

「もうよい。その松岡軒とやらの製品を取り寄せなさい」

「ははっ」

「だが…だが…」

「は?」

「手に入らぬ、となると、余計に欲しくなるものじゃの…」


え~…

けっきょくドラ息子は役に立たない、と見切りをつけた母は、

自分で「リンナイ」の羽二重餅を探すことにしたようです。

まず、父の職場の同僚から、どこであの羽二重餅を買ったのかを

聞きだします。だがこれが…

「永平寺の売店」であったような気もするし、

「兼六園」であったような気もする。というやけにあやふやな情報。

そこで兼六園に電話をかけてみると…

どうもお役所で管理しているものらしく、特定の商品だの売店だのに

関する情報を教えるわけにはいかぬものらしい。

そこで観光協会とやらに聞けといわれる。

んで…

「リンナイの羽二重餅をさがしておるのじゃが」

「はい?リンナイ?」

「リンナイじゃ。リンナイ製菓…知人が兼六園で購ったときいたのじゃが」

「…さあ??…(なんだろうね。と協会の姐さんが同僚に尋ねる)え?…え?…」

「なんじゃ?」

「あの、それは『林内』ではなく『竹内』ではないでしょうか?」


はい。…というようなわけで

ようやく探し求めているものの正体が判明しました。

「竹内製菓の羽二重餅」

その、観光協会だかなんだかに

兼六園内の売店、「寄観亭」(きかんてい)というのを紹介され、

そこからうちにその羽二重餅を送ってもらうことになりました。


で、僕が「楽天」で頼んだ、

「松岡軒の羽二重餅」

と同日に兼六園からの荷物も届いたことでありました。


「祝着至極にぞんじまする、母上」

「む」

「ネット社会だのなんだの申しましても、やはり電話ですな。世の中は電話で動いておりますな」

「む」

「いや、めでたい、めでたい」

「む…だが、ちと残念な気もするの」

「は?」

「電話でダメだったら、妾は直接、金沢、福井にまで旅に出るつもりであったものを……」


□□□□□□□□


食べた感想。


結論からいうと

羽二重餅は羽二重餅である。

どちらも、ま、大して変りませんでした。


違いを書いておくと。

「竹内」→個別包装。あっさりめの味。歯ごたえがある。黄色っぽい色をしている。

「松岡」→個別包装ではない。甘い。口の中でとろける。白い色。


しいていうと…竹内の方が好き。

松岡は甘すぎてもたれる気がする。

だけど、ネット通販で簡単に手に入らない、というので

竹内の点が甘くなっているのかもしれない。


そんなこんなで羽二重餅騒動は終わりました。



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