ようするにらぷたん嬢相手に
ディズニーのお姫さまものの解説をしていて
わかったことはただ単に…
④「物語る」という行為の快感。
――ということだけの
ことなんだろう、とおもいます。
「小説」などというヤクザなもんに手を出してしまって以降…
つまり…
不特定多数の読者を対象にするメディアにずぶずぶと
はまりこんでしまって、抜け出せなくなって…
んで、そのことで逆に、特定の…
今、目の前にゐる人相手に「物語る」ことをすっかり忘れてしまっていた。
そうだ。
オレはこの行為がけっこう好きだったんだっけ、と思い出したわけです。
⑤…とかなんとかいって「物語る」行為がちゃんとできない。
わけです。これも「小説」のせいだとおもいます。
こないだ書いた「白雪姫」ですが…
僕は小人目線でしか、もはや「白雪姫」を語れなくなっているわけです。
「あの子と一緒にいた至福の日々。でもある日帰ってくるとあの子はいなくなっていた」
みたいな…失恋した男の心象風景みたいのしか語れなくなっているわけです。
⑥「眠れる森の美女」はほとんどおぼえていない。
つづいてらぷたん嬢相手に「眠れる森の美女」を解説したのですが、
これはほとんど記憶に残っていないことが明らかになりました。
トマス:これは…つまり…オーロラ姫がなんで眠ってしまったかというと、つまり…えーと…なんだっけ…
らぷたん:大丈夫ですか?
ト:あんましおぼえてない…えーと、たしか、針を指に刺したのが原因で魔法が発動すると、そんな感じであった、と…
ら:????…
ト:ごめんなさい。僕、ですね。「はは~ん、これは破瓜のイメージだな」なんてインテリくさいことを考えていたもので…
ら:??…はか?
ト:破瓜ですよ、破瓜。針で指を刺すという、ロストバージンの象徴だな、という…
ら:はぁ?ちょっと、それってインテリなんすか…わけわかんねー…
えー…そんなわけで、僕にとっての「眠れる森の美女」は、
「なんだか理由はわからないが、オーロラ姫の『ロストバージン』っぽい出来事でお城中が眠りに落ちるんだが、やっぱり王子さまのキスかなにかでみんな目が覚める」
…という大雑把なおはなし、になりました。
あとラストシーン…魔法使いの三人のかわいいおばあちゃんがでてきて
そいつらがケンカをして魔法合戦みたいのになって
んで、華麗にダンスをしているオーロラ姫のドレスの色が
カラフルに変わる、そこが見どころである。
というところあたりも説明してやりました。
「ようするにビジュアル勝負の映画であるから、あらすじなどはどうでもいいのだ」と苦しい言い訳をしました。
たしかワイドスクリーンになったはじめてのディズニー作品、
のような記憶があるんですが…どうだろう?違うかもしれません…
⑦「シンデレラ」は変態SM血まみれ物語である。
そんなわけで「物語る行為の快感」とかなんとか
かっこつけたことをいったくせに「物語」をほとんどおぼえていないことが
明らかになりました。
そんなインチキ語り部トマス・ピンコによると…
「シンデレラ」は…
トマス:これは実は中国起源のおはなしなので、ずばり足フェチものです。
らぷたん:はあはあ、先生がお好きな…
ト:はい。まあ、纏足ですね。小さいあんよ大好きという信仰がつまり、あのガラスの靴エピソードに…え?え?ひょっとして?あなた?…
ら:わかんないっす。
ト:ガラスの靴、知らない?……
ら:うー…「シンデレラ」というとディズニーランドのお城のイメージ…以上。
ト:ディズニーランド?いったことあんの?
ら:一度だけ友達と行きました。でも着ぐるみ歩いてんじゃないっすか。なにがなんのキャラクターだか全然わかんなくて、すげーつまらなかった…
ト:えー…あの~…12時になると魔法が解ける、とか?…知らない?
ら:知らない…
ト:かぼちゃの馬車も?…
ら:うー…
こんな人相手なので…
つまり…「足フェチ要素」に食いついたり
前回紹介したように、「ピーターパンとティンカーベルはセック○できない」
とかいう発想をする人なので、
より変態度の高いグリムバージョンの「シンデレラ」を紹介することにしました。
トマス:…でシンデレラのお姉さんは、ガラスの靴に足が入らないので、指を切るんです。足の指を。
らぷたん:ククククククク…
ト:で、めでたくガラスの靴に足が入るんですけど、でも、「あれお前、血がでてんじゃん」ってことになって、バレちゃう。
ら:クククク…グロい…
ト:そこへシンデレラがあらわれると、すんなり、ガラスの靴が足に入る。
ら:ははぁーん、めでたしめでたし。
ト:ま、まだ、続きがありまして、シンデレラと王子さまの結婚式。お姉さんたちと継母が呼ばれまして…
ら:ふんふん。
ト:そこで、焼けた鉄板が用意されまして…ギンギンに焼けた鉄板。
ら:ふんふん。
ト:その上を…踊らされるんです。継母と姉さんたちが…
ら:ククククク…
ト:死ぬまで踊らされる。それをシンデレラと王子さまが笑ってみている、という。
ら:きゃー…グロい。グロい…
でも…うちに帰ってきてから、
岩波文庫版グリム童話にあたってみると…
鉄板の拷問は「雪白姫」の方だということがわかりました。
(ナルシストのお妃はそうやって殺されます)
ちなみに正しいシンデレラでは…
花むこ花よめが教会へ行く段どりになると、姉は右に、妹は左につきそいました。すると、二羽の鳩が、めいめいから、目だまを一つずつ啄きだしました。お式がすんで、教会から出てきたときには、姉は左に、いもうとは右につきそっていました。すると、二羽の鳩が、めいめいからもう一つの目だまをつつきだしました。こんなわけで、ふたりの姉妹は、じぶんたちが意地わるをしたばかりに、かえだまなんぞになったばかりに、ばちがあたって、一しょうがい目くらでいることになりました。
(岩波文庫「グリム童話集(一)」241~242ページより)
てなわけで、眼をくりぬかれるんですね…
こんなわけで…
⑧不特定多数を相手にする「小説」では語り口の改変はできないが、特定の相手に「物語る」場合、相手の反応に応じて、語り口、モチーフ、プロットの改変が容易に可能である。
などということを理解したわけです。
ま、あたりまえすぎることですが…
逆にいうと…「小説」ってものすごく不自由だな、と…
ま。こんな風に色々と考えさせられたわけです。