「山口晃展 画業ほぼ総覧―お絵描きから現在まで」
感想後半。今回はけっこうマジメに感想を書きます。
…というようなわけで、
ようやく群馬県立館林美術館に到着したトマス・ピンコでありました。
道中、人類に出会わなかった、などと書きましたが、
美術館も同様で…
たぶん両手で数えられるくらいの人しか出会わなかった気が…
まあ、平日午後。地方の美術館ですからね。
そもそも山口晃ってどれほどの知名度なんだろ?
わからなきゃググってくれ、といいたいところだが、
それも何なので、購入した複製画を載せることにした。
(展覧会のカタログは12月にならないとできないらしいです)
はい。こんなの。
戦国時代から江戸初期にかけて、
京都の町の繁栄を細かく屏風に描く「洛中洛外図」ってのが流行ったんだが、
それの現代バージョンみたいなことを、この山口氏はよくやる。
山口晃は徹底的に「生活」「日々の生活」を淡々と、丹念に描くタイプの人。
「非日常」を描くことはない。描くこともあるけど、たいてい失敗作な気がする。
絵描きに限らず、小説家、音楽家、映画監督など、
モノ作りをやっている人は、僕が思うに、ですよ。
「生活派」と「非日常派」におおざっぱに大別されるような気がする。
わかりやすい例をあげると、
村上春樹→「生活」 村上龍→「非日常」
小津安二郎→「生活」 黒澤明→「非日常」
というような感じかな。どっちがスゴイとか、どっちがダメとかいうんじゃなく、
作家としてのタイプを示したつもり。
あと突き詰めていくと、小津の淡々とした生活描写の中に
ゾッとするような「非日常」が挿しこまれたりするんで、
(「麦秋」の上野での不気味な風船シーンとか、ね。あれほどおそろしい「死」の表現を僕は知らない)
この両者は離ればなれじゃなく、
隠れたところで手を握っているような気もするんだが、ま、
そのあたりはここでは追求しない。
ちょっと理屈ばかり書いたが、山口晃のはなしに戻る。
と、
同世代の会田誠が「非日常派」
やはり山口晃は「生活派」なんである。(と偉そうに断言しておく)
えーといつでしたっけ?以前、会田誠の展覧会もとりあげたが、
あれを見ての、なんかこうグチュグチュした落ち着かない感じ。
おのれの脳みそがひっくり返される、あれは明らかに山口晃にはない。
山口晃をみての感想は、
「あー、やっぱりウチが一番」
というような感じで、
日常生活に潜む妙なおかしみ、既視感であったりする。
カタログがないもんで、具体的な作品名をあげられないが、
「ビルの上のダクトって確かにこんなだ」
「おばあちゃんの座椅子ってこんなだ。あとおばあちゃんが壁に貼るカレンダーってこんなだ。こたつの上のみかんはやっぱりこんなだ」
二つ上の画像…
『公共広告機構マナー広告「江戸しぐさ」の為の原画より
「感謝の目つき」「束の間つきあい」』っていうのをご覧いただきたいが、
これを見て感じるのは、やはり
「家の前のコンクリートブロックやら、発泡スチロールやらを利用した植木」
「女子中学生のカバンを持つ仕草」
「休憩中のOLの仕草」
「ベンチで本を読む老婦人の姿勢」
などというディテールに
「ある!ある!こういうのある!」
に感嘆する。そこなんじゃないか。それがすべてなんじゃないか?
だが、小津安二郎同様の「不気味さ」を、
必ずどこかに放り込む。
この不安感もやっぱり山口晃なんである。
そういや、山口晃その人も、
小津安っさん同様、手入れされたヒゲをはやしたダンディだったりする。
会田誠その人は、カーゴパンツにTシャツ、無精髯なんてだらしなさと
好対照である。
トマス・ピンコは、上野の森美術館の「アートで候。会田誠・山口晃展」で、
二人とも実物を見たんで、その好対照ぶりがよくわかる。
トークショーをやるんでも、
会田誠→「行き当たりばったりで、出たとこ勝負」
山口晃→「きっちり笑わせるところは笑わせる、エンターテイナー」
という好対照ぶりであった。
まあ、そんな山口晃展でした。
刺激を求める人にちょっと足りない。
けれど、落ち着きたいのなら、行くべきです。
えー、以下、建物の紹介。
水ものです。
水がジャージャー流れてます。
群馬ってカネあるんだな。
だってさ、イバラキの建築…
バブルの頃建てた建築…
水止まっちゃってますよ、噴水とか、池とか。
まずそこに予算削減の、なんつーか、矛先がむかうよね。
水じゃぶじゃぶ使ってるよ。
カネあるねー、群馬県。
やっぱし群馬県人=馬、かね。
競馬で儲けてんのかね。
お馬さんのまわりはカネ集まるよね。
それともなにか金鉱かダイヤモンド鉱山でもあるのかね?
「村野藤吾賞」とかとっちゃってるすごい建築らしいんだが…
ちょっと僕には…ピンとこない。
いちおう買ったばかりの16-35㎜ニッコールを使いたくてたまらんで
撮りまくったんだが…
いい建築なのかね?
かっこいいのはわかるよ。
↓なんか「惑星ソラリス」っぽいよね。
床とかなんか高そうだな。
壁も凝ってるよ。
でもこういう、ゴージャスless is more 路線では、
ミース・ファン・デル・ローエ御大がやるとこまでやっちゃってるんだから
それ以上なにをつけ加えるのか、僕にはわからん。
まあ、磯崎新とか、原広司とか
ゴテゴテしたのが僕好きなんで、単に好みの問題なんでしょう。
はい。秋の日はさっさと暮れまして、
僕も群馬からさっさと撤退することになります。
多々良駅、あいかわらずヒト、いないよぉ~
あとね、やっぱり次の電車まで30分待ちだってさ。