前回。CDの森繁さんのスピーチが爆笑だ。
だけど疲れ切ったから書かない。
とか、思わせぶりで終わってしまって――
でも疲れて眠ってみると、
ここ数日、寝過ぎたせいか4時間くらいしか眠れず、
(体力がないせいか)
ま、とにかく目が覚めてしまって元気なので、
森繁さんのスピーチを書き写してみます。
森繁さん、スピーチ中、小津安っさんのマネをするんですが、
それが驚異的にうまいです。
以下、小津監督のマネで「はい、カット!」というところがあるんですが、
小津組の現場の雰囲気が伝わってきて、
僕的には、涙が出てきそうになるところでもあります。
――監督さんの中で一番、映画監督というのはこの方じゃないかというようなご風貌の方で、
えー、ちょっと日本人離れもしておられるようでございますけども(会場笑い)
たいへんおしゃれで、監督らしい格好はこの格好だといって
歩いていらっしゃるようなご風貌でございます。
で、小津さんのそばへきまして、
「一遍ぐらいわたしもだしたらどうだ」
「安く出るから」
っていったんですけども、
「あ。オマエ、きらいきらい」(小津)
オマエ、きらいきらいって……(会場笑い)
全然わたしは嫌われておりましたが――
縁あって「小早川家」に一役いただきまして……
場所は宝塚でございます。取り囲んでおりますものは東宝勢でございます。
いっちょこの際ここでやっつけようというようなことになりまして
「今晩飲みにこい」(小津)
毎晩飲みにこい、でございますけども、今晩のみにこい。
ゆうべも飲んだじゃないか。
「いやいや今夜も飲みにこい」(小津)
え、山茶花と二人で行きまして、
「なんで五秒や十秒のカットばっかり撮るんだ」
というのを酔いにまぎれていいました。(会場笑い)
「松竹じゃ大根がそろっているから五秒や十秒でいくかもしれんが、
東宝はいい役者がそろっているから、二分や五分はもつんだ」
(会場笑い)
わたくしが言ったんじゃございません。
山茶花が言いました。(会場爆笑)
よほど癇に障ったらしくて、山茶花が便所行ってから
「あいつはバカだ」(小津)
(会場爆笑)
「あいつはバカだよ」(小津)
っていっておられましたけれども
内心、山茶花の意見も正しい、とわたしはおもっておりました。(会場爆笑)
そのあくる日、
今日はいっちょうあの監督を驚かしてやろう、とおもって
手ぐすね引いておりましたが、立ちあがると、
「はい、カット!」(小津)
とこういうんで、(会場爆笑)
わたしとしてはなんにもやりようがないんで――
「どうだい。困ったろ、オマエ?」(小津)
(会場爆笑)
「困ったろ。やってみろよ。俺は写さねえから」(小津)
(会場爆笑)
癪に障りましたから、カットのあとも全部芝居をいたしました。
こんなのもある。あんなのもある。というのをみせましたが、
そっぽをむいてタバコ吸いながら
「フン……フン……」(小津)
って笑われただけでございました。
以上。
森繁……すげーな。
立川談志が、どこかで
「美空ひばりのエロ歌、森繁のエロ話を生で聞かなかったのは悔いが残る」
と喋ってましたが、
そうだな、この調子でエロ話、すごいでしょうな。
□□□□□□□□
さて、「小早川家の秋」(1961)の森繁久弥ですが、
オープニングを飾る、実にいい役です。
出番が少ないのに目立つ、という。
ま。大スターにふさわしい扱いです。
原節子の未亡人と再婚しようと狙っているのですが、
森繁久弥と原節子、二人が同一カットに映ることは一切ない、
というので、二人は結ばれない、というのが観客にすぐわかります。
それから小津マニアは、二人の顔の大きさの違いに気づくでしょう。
森繁は小さく、原節子はデカく映します。
完全に森繁さんが原節ちゃんに圧倒されている感じ。
「お茶漬けの味」の木暮美千代と佐分利信の対話のシーンが有名ですが、
親子、夫婦、といった間柄の対話では
各ショット、各ショット、
几帳面に頭の大きさを揃えるのが小津流です。
(とうぜん、俳優と女優さんでは頭の大きさが違うので、普通に撮ると頭の大きさが違ってしまいます。それをカメラからの距離を変えることで、頭の大きさを整えるのです。遠くから撮れば、頭は小さくなり、近くから撮れば、大きくなる。それで男女の頭の大きさを几帳面に揃えます……ちょっと文章で説明するのが難しいですが)
あと……
森繁久弥の背後に
「彼岸花」以降おなじみの
BLACK&WHITE
森繁さんの服装も「黒白」といっていいか。
あとは……
「東宝勢」のくせに小津組常連のような顔してる加藤大介にむかって
(森繁はちょっと嫉妬してたかな??)
「火」がもろに……
「男根」――
灰皿がなんかかっこいいな。
「小早川家」
わたくし、じつは一二回しかみてないんですが……
オープニングちょろっと見返しただけでこの濃度……
すごいな、やっぱし小津安っさん。
だけど疲れ切ったから書かない。
とか、思わせぶりで終わってしまって――
でも疲れて眠ってみると、
ここ数日、寝過ぎたせいか4時間くらいしか眠れず、
(体力がないせいか)
ま、とにかく目が覚めてしまって元気なので、
森繁さんのスピーチを書き写してみます。
森繁さん、スピーチ中、小津安っさんのマネをするんですが、
それが驚異的にうまいです。
以下、小津監督のマネで「はい、カット!」というところがあるんですが、
小津組の現場の雰囲気が伝わってきて、
僕的には、涙が出てきそうになるところでもあります。
――監督さんの中で一番、映画監督というのはこの方じゃないかというようなご風貌の方で、
えー、ちょっと日本人離れもしておられるようでございますけども(会場笑い)
たいへんおしゃれで、監督らしい格好はこの格好だといって
歩いていらっしゃるようなご風貌でございます。
で、小津さんのそばへきまして、
「一遍ぐらいわたしもだしたらどうだ」
「安く出るから」
っていったんですけども、
「あ。オマエ、きらいきらい」(小津)
オマエ、きらいきらいって……(会場笑い)
全然わたしは嫌われておりましたが――
縁あって「小早川家」に一役いただきまして……
場所は宝塚でございます。取り囲んでおりますものは東宝勢でございます。
いっちょこの際ここでやっつけようというようなことになりまして
「今晩飲みにこい」(小津)
毎晩飲みにこい、でございますけども、今晩のみにこい。
ゆうべも飲んだじゃないか。
「いやいや今夜も飲みにこい」(小津)
え、山茶花と二人で行きまして、
「なんで五秒や十秒のカットばっかり撮るんだ」
というのを酔いにまぎれていいました。(会場笑い)
「松竹じゃ大根がそろっているから五秒や十秒でいくかもしれんが、
東宝はいい役者がそろっているから、二分や五分はもつんだ」
(会場笑い)
わたくしが言ったんじゃございません。
山茶花が言いました。(会場爆笑)
よほど癇に障ったらしくて、山茶花が便所行ってから
「あいつはバカだ」(小津)
(会場爆笑)
「あいつはバカだよ」(小津)
っていっておられましたけれども
内心、山茶花の意見も正しい、とわたしはおもっておりました。(会場爆笑)
そのあくる日、
今日はいっちょうあの監督を驚かしてやろう、とおもって
手ぐすね引いておりましたが、立ちあがると、
「はい、カット!」(小津)
とこういうんで、(会場爆笑)
わたしとしてはなんにもやりようがないんで――
「どうだい。困ったろ、オマエ?」(小津)
(会場爆笑)
「困ったろ。やってみろよ。俺は写さねえから」(小津)
(会場爆笑)
癪に障りましたから、カットのあとも全部芝居をいたしました。
こんなのもある。あんなのもある。というのをみせましたが、
そっぽをむいてタバコ吸いながら
「フン……フン……」(小津)
って笑われただけでございました。
以上。
森繁……すげーな。
立川談志が、どこかで
「美空ひばりのエロ歌、森繁のエロ話を生で聞かなかったのは悔いが残る」
と喋ってましたが、
そうだな、この調子でエロ話、すごいでしょうな。
□□□□□□□□
さて、「小早川家の秋」(1961)の森繁久弥ですが、
オープニングを飾る、実にいい役です。
出番が少ないのに目立つ、という。
ま。大スターにふさわしい扱いです。
原節子の未亡人と再婚しようと狙っているのですが、
森繁久弥と原節子、二人が同一カットに映ることは一切ない、
というので、二人は結ばれない、というのが観客にすぐわかります。
それから小津マニアは、二人の顔の大きさの違いに気づくでしょう。
森繁は小さく、原節子はデカく映します。
完全に森繁さんが原節ちゃんに圧倒されている感じ。
「お茶漬けの味」の木暮美千代と佐分利信の対話のシーンが有名ですが、
親子、夫婦、といった間柄の対話では
各ショット、各ショット、
几帳面に頭の大きさを揃えるのが小津流です。
(とうぜん、俳優と女優さんでは頭の大きさが違うので、普通に撮ると頭の大きさが違ってしまいます。それをカメラからの距離を変えることで、頭の大きさを整えるのです。遠くから撮れば、頭は小さくなり、近くから撮れば、大きくなる。それで男女の頭の大きさを几帳面に揃えます……ちょっと文章で説明するのが難しいですが)
あと……
森繁久弥の背後に
「彼岸花」以降おなじみの
BLACK&WHITE
森繁さんの服装も「黒白」といっていいか。
あとは……
「東宝勢」のくせに小津組常連のような顔してる加藤大介にむかって
(森繁はちょっと嫉妬してたかな??)
「火」がもろに……
「男根」――
灰皿がなんかかっこいいな。
「小早川家」
わたくし、じつは一二回しかみてないんですが……
オープニングちょろっと見返しただけでこの濃度……
すごいな、やっぱし小津安っさん。