毎年やってる予防接種をサボったせいで、
6年ぶりにインフルエンザかかりまして、
今は
すっかり平熱なのですが、
高熱の余波か、
読書するのも長続きせず、
といって寝ころんでいても眠れず……
なのでCD「小津安二郎の世界」の
小津安二郎自身の証言のところだけ書き起こしてみることにしました。
ひじょうによいCDです。2枚組。
「一人息子」以降の主要作品の音声による抜粋。
(「長屋紳士録」の笠智衆のノゾキ、「麦秋」のアンパンシーン等々)
それに小津安二郎自身と、
飯田蝶子、笠智衆、杉村春子、岸恵子等々
出演者のインタビューの組合せです。
難点は……↓↓
この渋い「民芸調」みたいなジャケットかな。
たぶんジャケットデザインしたやつは
小津作品とか見たことないのでは?
みたことあるにしても
「東京物語」と他に2,3作品しかみてないのでは??
オヅらしくもっとモダンにかっこよく攻めてほしかったものです。
以下にやってみます。
小津安っさんの声は、鼻にかかった太めの声でけっこう早口。
ばりばりの下町っ子というトーンです。
――こっちはこの、ニワトリ描いてんのにね、
「山描きゃいいじゃないか」「山の方がスケールが雄大だよ」
なんつったってね、こっちはニワトリが描きたいんだから
そういう批評はね、いくらいわれても
「山は他の人の山をみてくれ」
とまあ、いうことになりましてね、
これはあまりに痛くもかゆくもないんですがね。
――だいいちね、僕はそうなんだな、
僕は天ぷらが好きだというのにね、
「おまえウナギを食え」という。「ウナギがうまいんだ」と。
僕は天ぷらが好きなんですからね。
それはやっぱり天ぷらの中でうまい天ぷらが食いたい。
「そうかい」つって、
「じゃおれもウナギを食おうか」なんて食ってみるとうまくない、と。
これは意味がないとおもうんですよね。
「山」とか「ウナギ」とか
どうみてもクロサワとしかおもえませんが……
つづいて「喜八もの」に関する証言。
喜八ものだとか、かあやんだとか、あの一連の長屋ものですね、
あれはまあ、僕は深川で生まれて、ま、うちの近所にその、
ああいうようなモデルになるような人間をたくさん知ってましてね、
それがやっぱし、この戦争後ああいう種類の人間はたいへんいなくなりましたね。
そう、今だったらそうほかでも違いやしないじゃないんですか。
深川と荏原中延と、「それは違う」っていう風なものがね。
あまり、この、目立たなくなってきましたね。
昔、半纏着て、朝風呂入ってるようなのが、
今、ズックの靴はいてジャンパー着てね、
昔は毎日ヒゲ剃ってたような大工が
今無精ヒゲ生やして、どうでもいいやってな格好してますがね。
(中略……ちと聞きとれないところがありまして)
よほどその空威張りっていうのか、そういう持っている清潔感というのか
そういうものが失われてきていますね。
以下シナリオ書きの苦心について
――それまあ、二人でね、野田と書かなきゃいかんといって、
このストーリーもなんにもないしね。
ま、世の中たいへん文明になってね、
時計のくっついたライター。あ、そりゃデパート行きゃある。
霜がとれる冷蔵庫ができた、とか。
ああ、ま、いろんなものがね、その、
ソ連の(アハハ)でかい打ち上げ花火ができるような世の中で
シナリオ買いに行こうったって、デパートにも売ってなきゃどこにも売ってない。
こっちでこしらえなきゃならんのだから、
これはしんどいとおもいますがね。
それはまあ実によく……
一体これはなにをやりゃいいのか?
なにからやらなきゃならんのか?
どうすりゃいいのか? と。
大変その、四十年やっててやっぱし暮夜ひそかに汗かいたりね。
まあ、なかなかしんどいことだとおもいますわ。
野田さんも僕もね、ひとつのなんというか、こう、
愛情の持てないものはあまり取りあげたくないわけですよ。
まあ、一年に五百本も映画が出来る中でね、
一本ぐらいそういうシャシンがあったっていいじゃないか。
収録されている中では
森繁久弥のスピーチが爆笑なんですが、
(小津安二郎一周忌の集まりの時のものだそうで)
もう疲れ切ったのでムリです。
ま、文章にしちゃうとね。森繁さんの話術の魅力は消えますよね。
まあ、とてもよいCDです。
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小津安二郎の世界 VICL-40023~24
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