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易・五行思想で読む「南総里見八犬伝」 その6

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久方ぶりの 八犬伝ネタ。

書いてる本人もほとんど忘れつつあった……

 

えー、

ようするに、ですね。

「南総里見八犬伝」の八犬士たちは

「易経」の八卦の化身なのではあるまいか?

という仮説であります。

 

かつて易者志望であった曲亭馬琴にとって

「八」といや、

まず思い浮かべるのは「八卦」――そう考えるのが、ごく自然ではあるまいか?

 

で、以下の表のような結論を得たわけです。

 

 

□□□□□□□□

もとい、最後の二人の証明です。

土気二人組は奇しくも 体育会系の二人であった。

⑦坤・☷=二黒土気=犬飼現八

(坤→「こん」と読みます)

 

例によって田中胎東先生の「気学密意」にしたがって見ていきます。

 

二黒を地役となす。

地役とは、地球の動いて止まらざるがごとくその身を労するをさす。すなわち、自ら身体を使役して人のために尽くすをいう。

勤勉、誠実、犠牲の志は二黒土気の祐気にして、怠惰、弛慢、背信の懈はこれが剋気たり。

(香草社、田中胎東編「気学密意」56ページより)

 

二黒を柔順となす。

体、静にしてその用流なるを柔順という。すなわち、柔順とは自ら主動せず、必ず上長を得てその命に従うをいう。

(同書58ページより)

 

前もどこかで書きましたが、

八犬士それぞれ 各人の物語があるのですが……

現八だけ 「現八の物語」というのがない。

ない、というとかわいそうなのですが、

 

芳流閣における登場シーン、あれは「信乃の物語」だし、

行徳における、信乃、現八、小文吾、そして赤ちゃんの親兵衛の合流も 現八は脇役です。

それからのち……

庚申山の冒険というのがありますが、

これはこれで「大角の物語」になってしまうので、

あくまで脇役に徹する現八なのでありました……

 

二黒を遅鈍となす。

(同書66ページより)
 
遅鈍……というとかわいそうなんですが、
現八先生にぴったりといや ぴったり。
というか信乃にはっきりこういわれてます……
 

犬飼、和殿の(たん)(ゆう)は、今に(はじめ)ぬ事ながら、(およそ)四万の大敵なるに、身は只一騎、()(もの)三十、一呼吸の(あはひ)にして、言下(ごんか)に大敵を(をど)し退けたる、其勢(そのいきほひ)推量(おしはか)るに、全身(みのうち)(すべ)(きも)にあらずは、何人(いづれのひと)(よく)せんや。実に我邦(わがくに)の張飛なる哉。戌孝(もりたか)が及ぶ所にあらず。然はさりながら惜むべし、和殿の思慮足らざりき。

(岩波文庫「南総里見八犬伝(九)」272ページより)
 
犬飼、君ってなんつーか心臓に毛が生えてるっていうか、
すごい勇気あって
三国志の張飛みたいだけど……
ほんと、オレにはかなわないって感じだけど、
でも、ね、ちょっと抜けてるよね~
 
ま、道節先生も毛野たんにこてんぱんに「バカ」といわれたりしますが……

 

本命二黒土性の人は、すべて自ら独立独行せず、必ず上長の人を得てこれとことをともになすべし。すなわち自ら上長に立って指揮下命するよりも、その次位に留って補佐援助するをその天賦となす。

されば大臣になるよりも次官となり、社長となるよりも副社長となって、名を棄てて実をとるを賢となすべし。

(香草社、田中胎東編「気学密意」76ページより)

はい。このあたり、現八君はよくわかっていらっしゃるようで、

決してリーダーになろうとはしてません。

あくまで凄腕のグリーンベレーみたいな地味な仕事に徹します。

 

あと、これはものすごくこまかいのですが、

というか深読みなのですが……

 

二黒を粉末となす。

小さく細く砕別するを二黒とす。

(同書71ページより)

 

現八の実の父は「糠助」というへんな名前の人なのですが、

(信乃が幼少期お世話になったこともある、近所のおっさんである)

 

このへんな名前はこれに由来しているのではあるまいか??

「糠」=「粉末」……

 

おつぎ、

⑧艮・☶=八白土気=犬田小文吾

(艮→「ごん」と読みます)

 

八白の「白」なんですが……

小文吾は登場時点からすでに「白」を強調されております。

 

当下信乃・見八は、目を(ななめ)にしてこれを見るに、(こえ)(あぶら)づきたる(はだ)()の、白きは雪をも欺くべし。

(いわなみ文庫「南総里見八犬伝(二)」237ページより)

信乃、現八、小文吾

この三人がそれぞれ 字の書かれた不思議な珠をもち、

なおかつ、体の一部に牡丹型のアザがある、という描写。

 

小文吾のお肌がピチピチして雪のように白い、というアヤシゲな一文です。

(白雪姫かよ!)

 

八白を継目となす。

(香草社、田中胎東編「気学密意」203ページより)

 

以前も書きましたが、

八犬士が連名になるとき、

最初は「親兵衛」

最後は「小文吾」になるパターンが多いのです。

小文吾=継目です。

 

八白を止まるとなす。

森羅万象止まる作用を、八白という。汽車、電車の停車、銀行、会社、商店の営業停止みなこれを八白とす。

(同書205ページより)

ここは例の暴れ牛のエピソードを思い出したくなるところ。

 

犬田小文吾悌順(やすより)は、(かの)竜種(たつだね)の、(つき)(たけ)く、べうもあを、(ちつと)く、(ひら)(かは)左右に、(しつか)捕駐(とりとめ)り。

(岩波文庫「南総里見八犬伝(四)」261ページより)

 

暴れ牛の角をガッと捕まえてしまう、という……

ついでにいえば、

「艮」(ごん)とは「山」の意味です。

 

そういわれてみると、

小文吾の行動パターンというのは

どこかに軟禁されてしまったり、

のっぴきならない状況に追い込まれて どうしましょう?? と考え込んでしまったり、

「止まる」パターンが多いように思います。

 

八白を少男となす。

無邪気年少の男子を、総称して八白という。

(香草社、田中胎東編「気学密意」212ページより)

相撲取りだった彼が、ずっと童形だったこと――前髪を剃らなかったことを思い出しましょう。

 

はい。

以上、八犬士全員の証明が終わりました。

 

次回以降は、この

八犬士=八卦

が、どのように応用できるのか、

どのように「南総里見八犬伝」の解読に役立つのか、みていきたいとおもいます。


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