「南総里見八犬伝」
――最大の謎。
にして最大のツッコミどころ……
犬塚信乃が村雨丸(刀の名前ですわ)
を、すり替えられたのをえんえん気づかなかった件につきまして……
易、というか五行思想を使って分析していきたいとおもいます。
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というか、大方の読者の方はこう結論づけて その結論に安心していらっしゃるに相違ない。
・犬塚信乃はアホなのだ。
と……
でも、それは違います。
最初に真の結論を書いてしまいますと、
・犬塚信乃(四緑木星)は
刀(金気)が大嫌いなのだ。
(金剋木なので……)
これが答えです。
でも、まあ、分析の前に、あらすじをみていきましょう。
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〇あらすじ。
んー というか、まず、
犬塚信乃が パパ・犬塚番作から 村雨を受け継ぐシーンなんですが……
これがあまりに濃すぎて要約しようがない、という……
あと、かっこよすぎだろ、番作パパ……
汝が人となるのちに、件の宝刀を督殿[左兵衛督成氏なり]に、献せて身を立させん、と思ひにければ年あまた、賊を禦ぎて秘おきつ。今宵汝に譲るべし。見よや。」とばかり硯筥なる、刀子を撈りとり、梁に釣し大竹の、筒を目がけて丁と打ば、釣索弗と打断て、筒はそがまゝ碬と落、両段に割れてあらはれ出るは、是村雨の宝刀なり。番作は遽しく、錦の嚢の紐解かけて、恭く額に推あて、霎時念じて抜放せば、信乃は間近く居なほりて、鍔根より刀尖まで、瞬もせずうち熟視る。煌々たるかな七星の文、照耀て三尺の氷寒し。露結び、霜凝て、半輪の月かと疑ひ、邪を退け、妖を治めて、千載の宝と称す。唐山の太阿・竜泉、我邦の抜丸・蒔鳩、小烏・鬼丸なンどいふとも、是にはまさじと見えたりける。旦して番作は、刃をやをら鞘に納め、「信乃この宝刀の奇特をしるや。殺気を含て抜放せば、刀尖より露霤り、讐を砍、刃に衅れば、その水ますます濆りて、拳に随ひ散落す。譬ば彼村雨の、樹杪を風の払ふが如し。よりて村雨と名づけらる。これを汝にとらせんに、そのざまにては相応からず。髻を短くし、今よりして犬塚信乃戌孝と名告れかし。
(岩波文庫「南総里見八犬伝(一)」331ページより)
「信乃、おまえが成人したら、成氏さまに献上して就職できるよう、村雨を隠しておいたのだ」
「見よや!!」
と番作、小刀を「丁」と投げると
竹筒が落っこちてきて 村雨があらわれるというかっこいいシーン。
で、村雨がいかにすんばらしい刀かという描写がいろいろありまして……
村雨の特殊ギミックが語られます。
「殺気を含んで抜くと、刃先から水が飛び出るのじゃ!!」
「いまから犬塚信乃戌孝(もりたか)となのれかし!!」
これで終わればいいのですが、
・村雨を受け継ぐ。戌孝という名前になる。
・父が自殺する。(切腹・いろいろわけがあるのさ)
・信乃、瀕死だった愛犬与四郎の首を村雨で斬る。(これまたいろいろあったのさ)
・与四郎の首から「孝」の字の玉が玉があらわれる。
・亀篠・蟇六(伯母夫婦)に養われることになる。
これらの事件が立て続けに起きます。
もう、僕には要約する力はありません。
というわけで、伯母夫婦に養われる信乃でしたが、
この亀篠&蟇六ってのはとんでもないワルで、
どうにかして村雨を盗って、甥の信乃を殺すか、それしか考えてません。
(それは番作もお見通しだったので警告していた)
で、蟇六が村雨をすり替える悪だくみが 岩波文庫の2巻目に語られるのですが、
信乃と一緒に川に漁に行きまして、
で、わざと蟇六、おぼれたふりをする。
それを信乃が助けようとする。当然、刀は岸に置きっぱなし。
ここで共犯者が刀をすり替える。
こんな事件が起きます。(ホントはもう一ひねりあるのだが、まあいいや)
で、亀篠&蟇六は、何食わぬ顔をして
就職活動に古河の成氏のもとへ出かける信乃を送り出す、という流れです。
冒頭語りましたが、信乃は刀がすりかわったことに全く気付いてません。
番作が「信乃、おまえが成人したら、成氏さまに献上して就職できるよう、村雨を隠しておいたのだ」
といいましたが、
逆にいうと、村雨がないと、これは何の意味もないのですが……