③です。
あらすじを説明するだけでものすごいコマ切れの記事になってます。
ようやく就職の最終面接にまでこぎつけた犬塚信乃でありました……
が……
かくてその詰旦、信乃は忽地に思ふやう、村雨は名刀なれば、先考年来、これを巨竹の筩に蔵めて、粱に掛給ひしか共、一点ばかりも錯たる事なし。大人の身まかり給ひては、われ亦年来腰に帯、枕に建て盗難に、あはじと思ひしのみにして、抜試る事なかりき。さればとて、今許我殿へ進らするに、刃の塵埃をも拭ざらんは、准備なきに似たり。かくは旅宿の徒然なるに、よき手すさみにこそと思ふ、傍に人のなき随に、やをら障子を引閉て、床柱のほとりに坐を占め、件の大刀を右手に拿て、まづ鞆糸の塵埃を払ひ、しづかに鞘を推拭ひ、引抜きて刃を見るに、村雨にはあらざりけり。「是はいかに。」と驚きつゝ、又とり直して熟視るに、その長短は等しけれども、焼刃は無下に似るべくもあらず。思ひがけなき事なれば、胸うち騒ぎて駐らず。
(岩波文庫「南総里見八犬伝(二)」177ページより)
村雨は名刀なので父が長年 竹の筒におさめておいたけど 錆ひとつつかなかった。
父の死去のあと、僕はずっと腰に帯たり、枕に立てたり、盗まれないように注意していただけで
抜いてみることはなかった。
(大事な刀……そんなんでいいのかよ!!!)
さて、いま許我殿(成氏)へ進呈するのに 刀の埃をぬぐっておかないと。
(今??……今かよ!!!)
これはいい暇つぶしだから、と
(そ、そんな軽いノリ??)
床柱を背に刀を抜き放ったところ、
なんと村雨ではなかった……
(確かめろよぉ……もっと前に確かめろよぉ……)
「これはいかに?」
(これはいかに? じゃねぇーよ!!)
んー、なんというんでしょうねぇ。このマヌケっぷりは。
まるでコント……
ま。この村雨盗難事件をきっかけに 信乃はお尋ね者になり
芳流閣の決闘というやつがおこり、犬飼現八(むろん犬士のひとり)と出会い、戦い、
それで、行徳まで流されて 犬田小文吾 犬江親兵衛(赤ちゃんだが)に出会うという
怒涛の展開につながっていくわけで、
あらすじは以上。
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とはいえ、村雨盗難事件。そして信乃のマヌケっぷり。
馬琴先生、ちょっとムリがありませんか?
というのが江戸時代以来、大方の見方だったのですが、
じつは陰陽五行説的には100%正しい。
(屁理屈バカの馬琴先生は間違っていない)
というのを以下、分析していきます。