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清水宏と小津安二郎 そして「塔の思想」

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

はじめに、今年は、ですね。
……昨年末より小説を書きはじめましたので、

更新頻度が落ちるだろうとおもいます。
小津安二郎関連の記事は、書くとしたら、
たぶん7月以降になるかとおもいます。

「彼岸花」以降の感想書きたいとはおもうのですが、
いかんせんシナリオ・関連書物を読んだり、
小津関連の記事はいろいろ時間がかかるもので。すみません。

あと、昨年末、
急に自宅PCのインターネットエクスプローラーが起動しなくなりまして、
いろいろやってみたのですが、ダメで、
でグーグルクロームを使い始めて、「こりゃIEよりいいや」などとおもったのですが、
アメーバ記事の投稿がすごくやりにくいことがわかりまして、
最終的にファイアーフォックスにたどり着いたのですが、
で、今、それで書いてるんですが、

これもやっぱり
画像を貼るのがめんどくさかったりします。


いや、とにかく今日は「天才」清水宏のことを書きます。

DVDのBOXセットが 2つ松竹から出ています。

第一集は映画ファンなら買うべきだとおもいます。
文句ない傑作揃いです。

第二集は作品のクオリティがかなり落ちます。
こっちは見なくても、いいかな。

何処で読んだか忘れたんですが、山中貞雄が
「清水は天才や。小っちゃんは職人や」
といっていたそうで、
(なぜか山中は清水のことを呼び捨てにしていたそうな)

小津、溝口にとってもやっぱり「清水=天才」であったそうで……

このクオリティの波、というのも天才の証かもしれません。


第一集の
「有りがたうさん」
「按摩と女」
「簪」
この三作品は日本映画史上最も美しい3作品かもしれんです。

それと、サイレントの「港の日本娘」
これは画面の作りとかシナリオとかがちょっと雑ですが、
「悪夢」めいた強烈なイメージの羅列にやられる人は多いかも?

ともかく天才でしかない作品群。


第二集は、
「風の中の子供」
「信子」
「みかへりの塔」
「子供の四季」

いわゆる「児童映画」ばっかしです。
僕にはあんまりおもしろくなかったです。
というか映画として「子供」あるいは「動物」が出てきたら、
それはある程度泣ける作品ができることは明らかで、
(実際、泣いた……)

はっきりいってずるいとおもいます。

あ。「信子」は大・大・大好きな高峰三枝子たん主演ですので、
僕にはおもしろかったですが、
(高峰三枝子が九州弁で大暴れする!!)
あと撮影・厚田雄春でこれまたおもしろいんですが、

ま、一般的にはイマイチな作品なんでしょう。はい。

どうもかなり調子の波がある監督らしいんですわ。清水宏。


えーそもそも清水宏作品とはなんなのか?
というのをひとことでまとめてしまいますと、

◎「天才と放浪する女のつかのまの出会い」

ということになります。
さらにこまかくいうと、

・天才(男根そのものの男)
・放浪する女(男根をもっている女)

となぜか、「男根」っぽいものに清水宏は固執するんですね。

あ。すみません、新年早々から「男根」「男根」……

でもま。最終的に
マグダ・レヴェツ・アレクサンダー著「塔の思想」
という真面目な書物につながっていきますんでご安心を。

えー、具体的にBOX第一集をみていきますと――

・「有りがたうさん」
上原謙は、「めちゃくちゃ優しい」&「かっこいい」(上原謙なので)
という「天才」なのですな。

あと異常なまでに礼儀正しい。

で、街道中の女は彼が好きなわけです。


彼が「男根」だというのは、

トンネル(女陰)の中を彼の運転するバスが突っこんでいく、
このシーンで明らかでしょう。


さらに 彼は石を投げる……shotするわけです。
(ん、というか清水作品の登場人物は男女関わりなく石を投げたがります)



放浪する女――
桑野通子が男根をもっている、というのは、

タバコを吸うシーンで明らかです。
というか、「畜生!」とかいったりする桑野ミッチーたまらんです。

デビュー直後でこんな仕事してたのね。


はい。お次。
・「按摩と女」
主人公の徳大寺伸は、視覚障碍者なのですが、
健常者より歩くのがはやく、
ケンカも強く、等々、

異能の人、として描かれます。
やっぱり「天才」なわけです。

さらに
「杖というアイテム」
「目がない、という属性」
「首を振るクセ」
が、「男根」そのものです。


で、放浪する女、高峰三枝子は
「傘」という男根をもっているわけです。

というか、この作品の高峰三枝子たんはやばすぎる……
今のところ、私の中で、
日本映画史上最も美しい最も美しいヒロインは誰か?というと――

「按摩と女」の高峰三枝子、ということになりそうです。


・「簪」
の主人公、笠智衆は傷痍軍人。
で、どんな才能、天才かというと、
異様に頑張る、という天才です。

温泉地で、歩くリハビリをしているんですが、
彼の異様なほどの頑張り、泣けます。

いや、別に泣けるから、いい、というんじゃ全然ないんですけど。

で、
「松葉杖」
「ぎこちない動き」
が、「男根」してるわけです。

さらに射的というのが、「男根」要素を強めています。


で、ヒロイン。放浪する女は田中絹代……
「傘」です。
あとタイトルにありますが、「簪」も男根アイテムとみたい。

いいな~、30年代の絹代たん……
ロリータフェイス&低いセクシーボイスの無敵の組み合わせ……

ただ、「簪」の場合。ヒロインの情報があまりに多すぎる気がする。
あまり謎めいた雰囲気はない。
「按摩と女」のヒロインの謎めいた雰囲気がよかったのだ、僕は。

ま、清水宏。田中絹代の元ダンナということもあるか??


で、さいご、サイレントの
・「港の日本娘」

右が「隣の八重ちゃん」の逢初夢子。
左が主人公の及川道子。

これはちょっと変わってて、
及川道子が「放浪する女」かつ「天才」
と一人二役のような感じがあります。

善の道にも悪の道にも純粋に邁進(?)するというような
――なんか日本離れしたヒロインです。

あ。当然「傘」です。


あと、斎藤達雄ね。
これが――この作品ご覧になった方しかわからんのですが、

及川道子と同棲してるんですけど、
なんか家来みたいな召使いみたいな不思議な存在です。
あからさまにいうと、
どうも「性的関係」にはないっぽいんですな。

ご覧になってない方。
そりゃないだろう。とおもわれるでしょう。
でも作品みるかぎり、そんな風な描かれ方です。

あ。↓↓
船の煙突と共に登場するのっぽの男。
もろに「男根」です。

んー、ほんとみょうちきりんな映画なんですよ。これは。


はい。こんな感じでして。

清水作品というのは、

◎「天才と放浪する女のつかのまの出会い」
で、
しかも男も女も「男根」を持っている、のですな。
「男根」映画なのですな。

これは一体なんなのか?
清水作品……どう解釈すべきなのか?

とおもっていたトマス・ピンコの前に
こんな書物があらわれたわけです――
マグダ・レヴェツ・アレクサンダー著「塔の思想」


彼女にとって「塔」というのは――

塔を建設することは、人間の抗しがたいひとつの衝動のように見える。それは何よりもまず、何らかの形で自己の生活感情を具体化したいという要求なのであり、現実的なさまざまな要求を基礎にしているのではない。
(河出書房新社「塔の思想 ヨーロッパ文明の鍵」29ページより)

……そこにはっきりわかる目的とか必然性があるわけではなく、内在するエネルギー自体が目的なのであり、独特の躍動的精神力自身が芸術形式になっている。
(同書30ページより)

塔はいわば、首尾一貫した運動の、つまり唯一の垂直方向へのうごきのにない手であり、けっして止むことのない高所への展開のひとこまなのであり、象徴的に表現され、芸術的に実現された垂直上昇の理念の純粋な具体化なのである。
(同書33~35ページより)

……無限への願い、逸脱したいという衝動……
(同書166ページより)

として描かれます。


いっぽう、おもしろいことに
ギリシア建築、ローマ建築、そしてイタリアルネサンス……
いわゆる「クラシック」な建築には「塔」は存在しない、というんですな。

ギリシア芸術が塔を除外するか、あるいはすくなくともよけいなものだとした点については、まだ他に本質的要因がある。そのようなひとつの本質は、すべてのギリシア芸術に見られる統一性と独立性である。そもそも、この芸術は自己の内部に沈潜する、原則的には外界から切り離された芸術なのである。孤立したそれ自身の世界、小宇宙(ミクロコスモス)なのであり、自己の限界を打ち破って伸展することなく、それ自体で解決し、完成する。
(同書117ページより)

(トマス注:ルネサンスにおいては)
節度と平静が、活力と垂直力学のかわりに登場した。集塊と平面の水平分割が強調され、横方向の新しいリズムが誕生した。規範と法則を求めようとする傾向、単純で偉大な基本形式と威厳に満ちた品位に対する嗜好とが、塔建設の抑止力としてはたらいた。
(同書142ページより)

ん?……「統一性」「自己の内部に沈潜」「ミクロコスモス」
「節度と平静」「規範と法則」……

これって小津じゃないですか??

笠智衆・佐分利信といった自分の「分身」を主人公にすえて、
で、いっつも同じ内容の作品ばっかり撮っていた。(ミクロコスモス!)
あの男。

「規範と法則」大好きな、あの男……



反対に――
清水宏が「塔」の作家だということも明らかでしょう。

つまり「男根」という「塔」

↑「港の日本娘」ではじっさいに「塔」が描かれ、
(汽船の煙突もそうね)

さらにそのものずばり「みかへりの塔」

「塔」というタイトルの作品まである。
(えーそれほどおもしろくないんだけど……異様な迫力がある作品です)


「塔の思想」のことばを引けば、

「人間の抗しがたいひとつの衝動」
「独特の躍動的精神力」
「無限への願い、逸脱したいという衝動」

これが「天才」ばかり出て来る清水作品の特徴であることも、うなずける。


まとめると、
・小津安二郎=古典様式(クラシック)、塔がない。
・清水宏=ゴシック、塔がある。


うーむ。
しかし、こんな二人がおない年で、同じ撮影所にいて、
しかも大親友であったとは……

□□□□□□□□

清水宏作品。個別に感想も書きたいのですが、
最初に書きましたように、時間があまりなく……

小説書きに行き詰まったら書くとおもいます。


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