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易・五行思想で読む「南総里見八犬伝」 その1

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はじめに結論を書いてしまいます。

曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」の八犬士、彼らは……

 

・犬阪毛野→坎(かん・☵)・一白水気

・犬飼現八→坤(こん・☷)・二黒土気

・犬江親兵衛→震(しん・☳)・三碧木気

・犬塚信乃→巽(そん・☴)・四緑木気

・犬山道節→乾(けん・☰)・六白金気

・犬川荘介→兌(だ・☱)・七赤金気

・犬田小文吾→艮(ごん・☶)・八白土気

・犬村大角→離(り・☲)・九紫火気

 

というように、易の八卦の化身なのではないか、という考察です。

 

以下、易・五行、そして「南総里見八犬伝」に興味のない方には

なんの意味もない記事となります。

ですが、「易・五行思想」 古代中国哲学の精髄みたいなところがありますので

それはそれなりにおもしろいものかともおもいます。

 

□□□□□□□□

 

そもそもアカデミックな世界、江戸文学研究の世界では

八犬士の「8」はどのように解釈されているのか?

 

高田衛先生の「完本 八犬伝の世界」をみていきたいとおもいます。

(というか、わたくしはこれしか八犬伝研究本を読んでない……)

 

 江戸時代は「八」は「少陰」と言って、吉数ではなかった。 「八」という忌むべき陰数は、『八犬伝』では主として「仁義八行」と「法華経八部」の二つによって聖別されている。

(ちくま学芸文庫・高田衛著「完本 八犬伝の世界」116ページより)

 

(トマス注:文観の描いた八字文殊菩薩について)

 その周囲に描かれている九人の幼童子に注意したい。あたかも慈母を慕う幼な児のように、唐獅子騎乗の文殊菩薩のまわりに散って、讃嘆と慕情をこめて仰ぎ見上げている童子たちは、いうまでもなく文殊八大童子と文殊侍者の善財童子である。これこそ、聖なる父母聖像としての伏姫・八房の合体像と、八犬士の関係をあらわす原基的なイメージではないだろうか。

(同書158ページより)

 

(トマス注:「馬琴日記」の記述によると、滝沢家では星祭……北斗星供がおこなわれていた)

 このような信仰を背景に、馬琴は北斗七星と八犬伝の脈絡を神話幻想として書いたわけである。先述したように、一時期『八犬伝』は『七犬伝』の構想を持ったが、その要件は北斗七星であったのである。

(同書543ページより)

 

(トマス注:北斗七星には輔星があるので八星とみることもできる)

 つまり北斗は事実上八星であり、しかも「輔星」が「丞相ノ象」とあることは、『八犬伝』に童子神として「神体示現」(テオファニー)し、「犬士の首」となる犬江親兵衛の設定と見事に符合することを思わないではいられないのである。

(同書543~544ページより)

 

――以上、

まとめますと、

①仁義八行のイメージ(例の仁義礼智忠信孝悌)

②法華経八部のイメージ

③文殊八大童子のイメージ

④北斗七星のイメージ

(補足説明しますと、

北斗七星のひしゃくの柄の先から二番目の星が「アルコル」と「ミザール」という二重星になっているので

8星である、ということです)

 

という説が紹介されています。

 

逆にいうと、トマス・ピンコ説の「八卦」……

「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の

八卦は完全に無視されている

ということです。

 

んー、のっけからなんか

「八犬士=八卦の化身」説には暗雲が立ち込めているようですが……

 

しかし、ですね。

麻生磯次先生の「滝沢馬琴」によると、

これは馬琴の二十代のエピソードですが……

 

作家として世に立とうとあせりながら、(トマス注:山東京伝の)山東庵に出入りしている間にも、馬琴の身辺にはさまざまなことが起こった。『蜘蛛の糸巻』によると、ある日の事、馬琴は京伝をおとずれて、「自分は卜筮を少々心得ていますから、神奈川のしるべを頼って、うらないをして、しばらく暮らそうと思います。都合では長逗留するかも知れません」といって、飄然と出て行った。

(吉川弘文館、麻生磯次著「滝沢馬琴」24~25ページより)

 

馬琴先生。

易者になろうという一時期もあったわけです。

そんな馬琴にとって、「8」といや、「八卦」だったんじゃないの??

ともおもえるんですが……

 

□□□□□□□□

前置きは終わりまして、いよいよ本論です。

わたくしがなぜ「八犬士=八卦の化身」説を思いついたのか?

 

そもそもの出発点は……

 

 

吉野裕子先生の著書によく出てくるこの表です。↑↑

吉野裕子というお人、今までの記事で何回か触れましたが、

易・五行思想から日本の民俗を解読する、というお仕事をされている方です。

 

この「五行配当表」なにかというと、この人の本に登場します。

で、

八犬伝ファンのわたくしにとってどうしても気になってしまったのは、ここ。

 

 

五常……仁 礼 信 義 智 って、これ、

八犬士の持っている玉の文字そのものじゃない??

 

さらに、↓↓

 

「仁」のところを横にみてみる……

つまり犬江親兵衛=仁ですけど……

 

まず

「木」→親兵衛の親父は山林房八→木に関係がある。

親兵衛の赤ん坊の時のあだ名は「大八」→大八車→木製……

 

「青」も親兵衛に関係が深いのよね……

親兵衛の愛馬の名前はむろん、「青海波」(せいかいは)

 

「甲」…甲乙丙丁の「甲」ですが、一番最初に里見候に仕えたのは親兵衛。

犬江親兵衛といや、八犬士のエース格です。

 

「寅」……もちろん虎退治のエピソードを思いだします。

 

「震」「☳」 この卦、ようするに「雷」をあらわします。

 

これは当然、親兵衛の神隠しのシーンを思い出させます……

 

一朶の靄雲天引降て、(いちだのむらくもたなびきくだりて)

電光凄じく、(いなびかりすさまじく)

風亦颯と音し来つ、

石を巻き沙を飛して、

草木を靡かす鳴動に、

(岩波文庫「南総里見八犬伝(二)」378ページより)

 

まあ、赤ん坊の親兵衛を 伏姫さまがさらっていくのですが……

電光(いなびかり)です。雷光です。

挿絵にも「雷」が 描かれています。

 

んーこれはいよいよ、

「八犬伝」の元ネタは「易」なんじゃないの???

という疑惑が濃厚になってくるわけなんですが……

 

めちゃくちゃ長くなりそうなんで、

今日はここまでにしときます。

 

というか、読んでいただいた方、おられるのか??


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