去年の12月 山下公園の氷川丸を見学しまして
大量に写真を撮りまして
……それを最近ようやく整理したので 何回かに分けて記事にしたいと思います。
山下公園に行って何百円か入場料を払えば見れるものなので
珍しくもなんともないものですが……
自分(トマス・ピンコ)のメインの関心分野として 1920・30年代の日本 というのがありますので
自分向けのメモという側面が強いです。
(氷川丸の竣工は 1930年(昭和5)4月25日だそうです)
参考資料としては――
横浜市教育委員会 「横浜市指定文化財「氷川丸」調査報告書」
これを使います。
(以下、「調査報告書」と書きます)
蛇足で言うと、この本のメインの著者の吉田鋼市先生は自分の恩師なのですが……
吉田先生というと、アールデコ建築の権威だったりしますが、
ポストモダン思想なぞをかじっていた自分はアールデコの研究をしてたりしたわけじゃないので
アールデコ、全然詳しくはないです。(まあ、それは以下の記事を読めばすぐにわかるでしょう(笑))
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で、今回の記事は中央階段です。
氷川丸の中で売っているパンフレット「氷川丸ガイドブック」の中では「中央階段」と書いてあります。
「調査報告書」では建築寄りの「階段室」という名称を使っているんですが、
たしか船の中の解説も「中央階段」と呼んでた気がするので 中央階段とします。
公式の順路通りに見学したとすると、
エントランス→一等児童室→一等食堂→中央階段
という順番になります。
まず、照明がかわいい。
「調査報告書」に 船内設計のマルク・シモンのカラースキームがのってるんですが、
この照明はシモンさんの設計どおりのものです。
アールデコって あれです。
名探偵ポワロの雰囲気のアレです。
以降、シグマの魚眼で撮る。
上の3枚は マクロプラナー50㎜
↓↓左手に見えるのが「一等児童室」 右手に見えるのが「一等食堂」
ちなみにここはBデッキ(2階)
一等食堂の入口
Bデッキ。船首方向を見て写真を撮ってます。
ドアの上の表示 DINING SALOON
吉田先生の「調査報告書」では この表記通り「ダイニングサロン」と呼んでます。
たぶんですが――
「ダイニングサロン」→マルク・シモンの設計書の呼び方
「一等食堂」→日本郵船の呼び方
ということなのかな。
しかし、凝ったディテール。
トリミングしたところ。
氷川丸はここだけではなく「マイナスねじ」が多いので大興奮です(笑)
逆に言うと、「プラスねじ」を使っているところは
「ああ、これはオリジナルじゃないのだな」ということです。
↓↓
Bデッキ 左舷方向をみて撮った写真。
写真の右側が船首方向
ひたすら魚眼で撮る。
「調査報告書」によると、階段室はオリジナルからほとんど改装されていないらしいです。
引用しますと
真ん中に円形飾りがあり、上下に溝掘りを施した正方形のパネルからなる壁、笠のついた壁付き灯など、まったく当初のままである。最も特徴的なのが階段の手すりで、8の字のような曲線とロータス紋様、それに波のような模様と蕨手を組み合わせたアール・デコ特有の造形を示している。そしてAデッキレベルの中央に見られる円形文様。これは氷川丸の名のもととなった氷川大社の神章「八雲」であるが、本来の「八雲」とは上下がさかさまになっているようである。
(「横浜市指定文化財「氷川丸」調査報告書」9ページより)
あちこちに このピンクの照明。
「調査報告書」のいう 「笠のついた壁付き灯」というやつ。
これが逆さまの「八雲」↓↓
マルク・シモンのカラースキームだとCとMを組み合わせた文様になっているようなので
これは日本で改変されたもののようです。
天井の照明。
これは部材自体もオリジナル……
(つまり、レプリカではない)
とたしか現場の解説に書いてあったように記憶してます。
たしか……
↓↓Aデッキ
右舷方向をみています。
つまり写真・左側が船首。(ややこしいか)
船の中って方向感覚がわからなくなる。
実際に船旅とかするとどうなのかな?
体験してみたいものです。
Aデッキ。中央階段脇から船首方向を撮ったところ。
正面にチラッとみえる部屋は「一等社交室」
Aデッキ。
左舷方向をみて撮ってます。
左側にあるのは船内郵便局。
↓↓船内郵便局の様子。
つまり中央階段と向かい合っているわけですな。
写真の「順路」の通りにいくと展示室、いろいろな資料が置いてある部屋にたどりつきます。
船内郵便局 いい職場だ。
サボれなさそうだが。
ただ、今のように飛行機があちこち飛び交い
スマホひとつで地球上のあちこちにメールを送れる時代とは違いますから……
責任重大です。
↓郵便局から中央階段をみたところ。
左側奥 一等読書室。
壁の火災報知器。
重要な装置はあちこちイギリス製だと読んだので
これもイギリス製か?
マイカ(雲母)を壊してボタンを押せ、という。
いまだとプラスチックを使うが、この頃はマイカか。
直接関係ないですが、小栗虫太郎の「後光殺人事件」(1933)でマイカを使ったトリックがあって
なんでマイカなんだ? とおもったものですが、
この頃はいろいろな工業製品にマイカ(雲母)を使っていたんでしょう。
今だとプラスチックを使うわけですが。
あ。マイナスねじです。
これは郵便局のポスト。
局員がいない時はここに入れるんでしょうかね。
Aデッキの表示。
マイナスねじ。
年季の入った色合いが良い。
船内郵便局の解説。
お読みください。
↓↓
これは個人的に「いい写真だな」とおもってる一枚。
資料的にどうこうではなくて。
いい雰囲気だな。と。
あ。船内郵便局の照明です。
この照明はオリジナルのデザインなのか? 「調査報告書」をみてもよくわかりません。
なんとなくマルク・シモンの趣味とはズレている気はする。
船内郵便局の英語表示。
……なのだが、enquiry office というと 船内全般の「受付」とかそういうことなのでは?
コンシェルジュ的な……
「船の中の分からないことあったらお答えしまっせ」的なニュアンスを感じるんだが、
どういうことなんだろう?
郵便局とは意味が違うような?
分かる方に教えていただきたい。
オリジナルの表示ではないのかな。
AデッキからBデッキを見下ろしています。
あ。以下6枚は 5年前に見学した時の写真になります。
5年後とたいして違いはないんですけど。
どれもマクロプラナー50㎜です。
Bデッキ
一等児童室をみて撮った写真。
一等食堂をみて撮った写真。
5年前は中央の照明が点いてたんですね。
いろいろと世知辛くなってる気がする。
あと ピンクの照明がついたところ↓↓
↓↓ピンクの照明が消えたところ。
なんでこの2通りの写真があるのか? 5年も経ってるので不明。
たまたま誰かがスイッチを押してしまったのか?
Aデッキ
左舷方向をみてます。