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「紅楼夢」感想 その2

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「紅楼夢」とは一体なんなのか?

ご存知ない方も多かろうとおもわれますので


岩波文庫「紅楼夢」第一巻のあらすじでも書いてみようかとおもいます。

トトやんのすべて


一巻には第一回~第十回が収録されています。

(ということはつまり、全十二巻の「紅楼夢」は、

全一二○回で終わるということです。)


・第一回

主人公、賈宝玉(か・ほうぎょく)のルーツが仙界の「石」であることが示されます。仙界の石が人間界をみてみようとおもって、人間に生まれ変わる…

それが賈宝玉なのです。

賈宝玉はそのせいで宝石を口にくわえて生まれてきます。


また、賈雨村(か・うそん)という人物が登場します。

野心満々の貧乏書生といった感じです。


この賈雨村、勉強がよく出来て、仕事大好き人間、

ちょいワルのエグゼクティブ野郎で、ぐんぐん出世する…

ちょうど主人公・おっとり坊ちゃん賈宝玉の正反対の存在として描かれます。

冒頭に登場するのがこの人物であるのは興味深い。


・第二回

官僚として出世した賈雨村が、友人から親戚の賈家のことをききます。

ようするに、読者へ向けて、

主人公・賈宝玉の一家を要領よく説明しているです。


この中で当時7、8歳の賈宝玉坊ちゃんを説明する中で

前回紹介した名セリフが登場します。


「…なんでも、『女の子のからだは水で出来てる。男のからだは泥で出来てる。ぼくは女の子を見ると、せいせいした気持になるが、男を見ると、臭くって胸がむかつくんだ』と、そんな言い草をなさるんだそうです。なんとふるってるじゃありませんか?ねえ、将来の色きちがいは疑いのないところでしょうな」

(岩波文庫「紅楼夢」一、60ページより)


・第三回

悲劇のヒロイン、林黛玉(りん・たいぎょく)の登場です。

母親を失った林黛玉は家庭教師の先生である賈雨村と一緒に

母方の実家である賈家へやってきて身を寄せることになります。

ついでにいうと、

賈雨村の方としては、一時的に落ちぶれて家庭教師なんぞやっていたので、

求職活動がてら都へやってきたということになります。


当然主人公賈宝玉坊ちゃんと、林黛玉の出会いがあります。

お互いがお互い、

「はて、おかしなこと!どうもどこかで一度お目にかかったような気がするわ」

(同書92ページより)

「このお嬢さんなら、ぼくお会いしたことがありますよ」

(同書95ページより)


などとおもったり、口にしたりする。

それもそのはず…二人は仙界で縁があった二人なのである。

(というあたりが第一回に説明されている)


林黛玉は…

蹙むがごとくして蹙まぬ霞をこめたような二つの眉、喜ぶがごとくして喜ばざる情を含んだ双の眼。一抹の愁いを帯びた態は両頬のえくぼから生まれ、病身らしいところにかえってそなわるなまめかしさ。…

(同書95ページより)

うんぬんかんぬん、ようするに「仙女のようなお嬢さん」と

描写されます。


また宝玉付きの侍女、「襲人」(しゅうじん)というお姉さんも登場します。

この変わった名前の登場人物は、

賈宝玉をめぐる主要人物の一人となります。


・第四回

薛蟠(せつ・ばん)という人物が登場します。

十二三の美少女をめぐって、殺人事件を起こすような

わがまま坊ちゃんです。


例の悪徳官僚、賈雨村が、うまいことやって

この殺人事件はもみ消されます。


ちなみに…個人的にはこの薛蟠…

バイセクシャルで、バイオレンス好き、ギャンブル好き、頭空っぽ…

金持ちアウトロー…ピカレスクロマンの典型的ヒーロー…

でもなんか母や妹の前だと、なんか、しおらしくてカワイイ…

「紅楼夢」のなかでは一番好きですな。


「薛蟠」って二文字入力するのに10分近くかかったけど、

「わだかまる」って入力すれば「蟠」って一発ででてくるってことを

10分たってから気づいたけど、

…でも好き、薛蟠くん。


・第五回

薛蟠一家が、例の殺人事件で故郷に居づらくなったこともあり、

親戚の賈家に身を寄せることになります。

ここで薛蟠くんの妹、薛宝釵(せつ・ほうさ)の登場です。


この宝釵ちゃん、不良の兄貴とは正反対のよく出来た妹。

美しい上に聡明で、やることなすこと落ち着いてしっかりしている。


…というような感じで、ようやく「紅楼夢」一巻の半分。


冒頭の五回ほどで

主人公賈宝玉の浮世離れした性格…

一生成長しないで、社会にも出ないで

女の子相手に楽しく遊んで過ごせればよい、という彼の思想(?)の紹介。


そして仙女のような美貌を持ち、頭脳明晰、

でもなかなか素直になれず屈折した性格の林黛玉。

しっかりものの薛宝釵。

お姉さんキャラでおっとりしている襲人。

…と、賈宝玉をめぐる華麗な主要女性キャラクターの登場。


それから賈雨村、薛蟠たちの世界。

カネ、セック○、権力、バイオレンスの世界…

殺人やら強姦やら、買収、ワイロやらで成立している現実世界を描くことも

この作者――曹雪芹先生は忘れていません。


ま。

「紅楼夢」全体の構造はこのはじまりの5話ですでに明らかです。


「繊細で美しいが、限りなく壊れやすい賈宝玉の世界」

…幾人もの美しい少女たちによって作られるガラス細工みたいな世界が、

美も感受性もない男どもの支配する現実世界によって

どのように破壊されてゆくのか…




…その3につづく。



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