なにかに憑かれたように「八犬伝」ネタを連投しております。
その4です。
えー
前回まで証明した4名に関しては
この……↓↓
吉野裕子先生の五行配当表であっさり答えが出てしまったので
まったく苦労がなかったのですが……
残り4名に関しては、答えを見つけるのに非常に苦労いたしました。
答えがわかってしまえば、「ふん、そんなものか」という感じですが、
2~3週間、悩みに悩みました。
はてさて
犬山道節
犬塚信乃
犬田小文吾
犬飼現八
この4名にはどんな「卦」が割り当てられているのか??
(この4名、偶然にも体育会系・武闘派が多い。信乃をのぞく)
□□□□□□□□
以下、答え。
悩みに悩みながら、 ざざっと岩波文庫の「南総里見八犬伝」を読み返し、
で気づいたのは、
兄弟分のような関係の犬士のペアが3組ある。
という事実でした。
①小文吾&現八
②道節&荘介
③親兵衛&信乃
この3組のみなさんです。
この3組以外にも
・信乃&荘介
・小文吾&毛野
・現八&大角
・小文吾&親兵衛
といった縁の深いペアもあるっちゃあるんですが、
・信乃&荘介→どっちかというと主従関係に近い。(彼らはそう意識はしてないが)
・小文吾&毛野→かんぜんBL……だよね。
・現八&大角→親切な現八が妖怪にだまされてる大角先生を助けた。
縁は深いが、兄弟という感じではない。
・小文吾&親兵衛→はい。伯父&甥です。
――というわけで 本当に「兄弟」といえるのは上記の3ペアなのではあるまいか。
①小文吾&現八
は、義兄弟の仲です。
そもそも乳兄弟……赤ん坊のころから縁がありました。
以下、小文吾のパパ、文五兵衛が信乃に向かってのセリフ。
かかれば子息小文吾とは、俗にいふ乳兄弟にして、その年歳も同じかるべし。
彼に兄なく、これに弟なし。はじめを忘れざらん為に、小文吾と見八と、兄弟の義を結せなば、久後までも憑しからん。
(岩波文庫「南総里見八犬伝(二)」208ページより)
ちなみに現八は十月生まれ、小文吾は十一月生まれで
現八のほうがお兄さんであるらし。
②道節&荘介
は、例の「肩柳道人」のエピソードからの付き合いです。
(道節はあやしげな火遁の術を使って 敵討ちのための資金集めをしていた)
道節と荘介は相撲をとって争うのですが、
戦いの最中、
道節の「忠」の玉が荘介の手の中に
荘介の「義」の玉が道節の手の中に
と玉の交換がおこります。
(ん。タマの交換?? って深読みはしないこと)
荘介 忠の字の玉をみていわく、
「吁不思議や、犬塚信乃と、わが秘蔵せし、孝・義一双の玉に等しく、光も形も寸分違はで、この玉には忠の一字あり。こは怎生怪し。」と驚くまでに、
(同書156ページより)
このあと、荘介は冤罪で投獄、
牢獄で拷問されるのですが、
礼の「忠」の玉を口の中に入れていたので
どんな苦痛にも耐えることができました。
(ものすごいマジックアイテム。
「ウィザードリィ」のワードナのアミュレットみたいなものだろう)
そのあと、道節&荘介は何度かバトルがあるのですが――
荘介から八房&伏姫、そして仁義八行の玉のはなしを聞かされて、道節は納得……反省。。
いづれも稀世の豪傑なるに、某眼力明ならねば、村雨の大刀を返さず、しばしば和殿と讐敵の、思ひをなせし面なさよ。
(岩波文庫「南総里見八犬伝(三)」136ページより)
また荘介は
忠は義を兼、義中に忠あり。かかれば犬士たらんもの、異姓にして骨肉の如く、玉の字号は同じからで、その感応異なることなし。こも亦自然の妙契なり。
(同書140~141ページより)
と、
「忠」と「義」は交換可能なようなことをいいます。
これだけ縁の深い二人なのです。
③親兵衛&信乃
この二人の関係は、まあ、壮絶、ですな……
というか、親兵衛の親父の山林房八が壮絶なのか。
はなしはものすんごく複雑ですので、うまく説明できなさそうなのですが、
山林房八が信乃にルックスが瓜二つというところがポイントでしょうか。
八犬伝序盤のクライマックス「芳流閣の決闘」ってのがありまして、
それで信乃はお尋ね者になっちゃうのですな。
芳流閣ってのはわがイバラキの古河にあるのですが、
信乃はそこから決闘相手の現八と共にフネに乗って千葉の行徳にたどり着く。
(芳流閣って高いところからフネに落っこちたので二人とも気絶している。
あと、古河から行徳というのは納得がいかない人が多いだろうが、戦国時代には
川でつながっていたようです)
その後なんのかのあって信乃は行徳の小文吾一家に助けられる。
しかし、当地の領主の手が小文吾一家に伸びてきます。
「信乃をひきわたせ」と。
そこで、信乃にそっくりの山林房八が 俺の首を信乃の代わりに渡せ、と……
(ザザッと、こんなですが、はなしはもっと入り組んで複雑です。)
で、山林房八ってのはカミさんの沼藺さん(小文吾の妹)と血まみれで死ぬんですけど……
その前に信乃が破傷風になったって話、しましたっけ?
あ、してない。(コロンボ警部風)
信乃は破傷風になっちゃったんですよ。
破傷風を治すには、ですね。
若い男女の生き血のミックスしたものが大量に必要なんだそうで……
(グロい……)
それで信乃は二重の意味で山林房八に助けられたわけなんです。
(ああ。ややこしい話だ)
信乃の死にゆく房八に向かってのセリフーー
某ははからずも、和殿夫婦の恵によりて、難治の金瘡癒たれども、和殿夫婦を生すべき、良薬なきこそ恨なれ。われ幸にして難を脱れ、志を得ることあらば、わがこの衣を染たる鮮血を、後々までも秘蔵して、その恩徳を子孫に伝ん。
(岩波文庫「南総里見八犬伝(二)」308ページより)
そして親兵衛(当時は赤ちゃんです)に関して
房八夫婦にこう誓います。
かかればその子大八の親兵衛は、わが骨肉の弟に等し。後年里見殿に仕まつりて、倶に戦場に臨まば、某かならずこの子を資て、敵を鏖にして功を譲ん。倘その戦ひ難儀に及ばば、近づく敵を殺払ひ、或は箭面に立塞りて、その死に代りて今宵わが、受し再生の恩に答ん。
(同書325ページより)
はい。
はっきりいってますね。
「わが骨肉の弟に等し」と。
これは信乃の心中を述べているわけですけど、
読者に迫ってくるのも
「血まみれの房八&沼藺夫婦が 瀕死の信乃を再生させた」
↓
「房八&沼藺夫婦は信乃のある意味両親である」
というイメージではないでしょうか?
以上、長くなりましたが、親兵衛&信乃は兄弟なのです。
□□□□□□□□
……ということは、ですね。
彼ら兄弟はそれぞれ、「五行」の属性が同じ人たちなのではあるまいか。
解答を書きますと、
①小文吾&現八=土気
(↑五行配当表から信・現八は土気だとわかっているので)
②道節&荘介=金気
(↑荘介は金気なので)
③親兵衛&信乃=木気
(↑親兵衛は木気なので)
――ということです。
さらに、ここで、九星図を引っぱり出して説明したいのは
土気→二黒土気、五黄土気、八白土気 の3種類
金気→六白金気、七赤金気 の2種類
木気→三碧木気、四緑木気 の2種類
があるということなんです。
これを敷衍すると……
①→このペア二人は二黒土気、五黄土気、八白土気のいずれか。
②→荘介が六白金気なので、当然、道節は六白金気。
③→親兵衛が三碧木気なので、当然、信乃は四緑木気。
乾・☰=六白金気=犬山道節
はい。ここまで答えは出ます。
□□□□□□□□
以上の推理によって 6名は「卦」が決定できました。
が、
小文吾&現八
このペアだけは決定ができない。
二黒土気、五黄土気、八白土気のいずれか。
まず、五黄土気、これは除外できます。
九星図をみると 五黄土気=中
なんですが、「中」という卦はありませんので。
(おまけに「九気密意」によると、五黄は「腐敗」「盗賊」「暴欲」等等
とんでもなくネガティブなことばかり書かれていて、
八犬士にはとてもあてはまりそうにない)
残ったのは二黒土気、八白土気。
これは先に答えを書いてしまいます。推理はあとで書きますね。
・艮・☶=八白土気=犬田小文吾
・坤・☷=二黒土気=犬飼現八
です。
以下、推理。
推理① 九星図による推理
九星図を見ると どうもアヤシイのは……
馬琴先生。九星図をもとにプロットを練ったのではないか? ということです。
関係の深い二人が ↑の赤丸で囲んだところのように
隣りあっているパターンが多いんですよね。
乾・兌は、道節&荘介の金気ペア
震・巽は、親兵衛&信乃の木気ペア です。
となると、
坎・艮は、毛野と誰か のペア
坤・離は、大角と誰か のペア になるはず。
となると、もう答えは明らかで――
艮=犬田小文吾((*´Д`)ハァハァ毛野たん……)
坤=犬飼現八(大角を妖怪の魔手から助ける)
というわけです。
推理② 「気学密意」による推理
二黒土気なんですが、
田中胎東先生によりますと……
地役 古 消化器 少々
柔順 実行 国土
母 平坦 炭素
地所 方形 粉末
営業 遅鈍 甘味
無 夜 下
(香草社、田中胎東編「気学密意」55~56ページより)
なんですって。
これって凄腕のグリーンベレー隊員みたいな戦闘力のくせに
かなり控えめな現八にふさわしくないでしょうか?
「南総里見八犬伝」――
われわれが読む大きな物語は
「信乃の物語」「道節の物語」「毛野の物語」そして「親兵衛の物語」
があるわけです。
それに対してちょっと控えめな物語として
「小文吾の物語」「荘助の物語」「大角の物語」がある。
ですが、現八の物語ってのはないのですよ。ほとんど。
芳流閣の決闘って、あれは「信乃の物語」だし。
行徳のエピソードは、メインは「信乃の物語」 そして「小文吾の物語」です。
大角をたすける庚申山エピソードは、もちろん、「大角の物語」がメインなんです。
たえず縁の下の力持ちキャラなのです。現八は。
それと
「夜」→庚申山の冒険
「下」→芳流閣の決闘(下からのぼって信乃を追い詰める)
「営業」→京都での道場経営。
を読みたくなるところですが……
一方の 八白土気は、
継目 変化 少男 辻
相続 改革整理 右脚 打開
止る 親戚知己 肋膜
貯蓄 山丘 関節
強慾 歓迎 耳鼻
吝嗇 家 節
(同書203ページより)
ですって。
まず「少男」
小文吾がずっと前髪をおとさなかったこと、童形であったことを思い出しましょう。
(アマチュアの関取だったので月代を剃っていなかった)
「止る」は相撲の関取をやってた小文吾にふさわしい。
暴れ牛を押しとどめたエピソードもあったっけ。
「親戚知己」 これは親兵衛との関係。
そして注目したいのは「継目」
高田衛先生は「八犬伝の世界」の中でこんなことを書いてます。
馬琴が八名の名を並記するとき、その甲乙なく軽重なきを期して、細心の注意を払っていることがわかる。普通の犬士連名の場合、親兵衛はたいていトップだが、その場合ほとんどかならず第八番目は犬田小文吾なのである。小文吾は親兵衛の血続きの伯父であった。伯父と甥という関係では、当然伯父の方が目上である。トップの親兵衛は、八番目の小文吾が伯父なのだから、その下位に位置し、事実上の座順は円環状ということになるのである。
(ちくま学芸文庫、高田衛著「完本 八犬伝の世界」428~429ページより)
あと、小文吾の名前が最後、というのは、
仁義礼智忠信孝悌 この順で 悌が最後というのもありましょうが……
九星的には「継目」とみたいわけですよ。
小文吾=八白土気=「継目」
なので、連名の最後にかならずくる、と。
□□□□□□□□
はい。
というようなわけで、残り4名の「卦」が特定できました。
艮・☶=八白土気=犬田小文吾
坤・☷=二黒土気=犬飼現八
次回以降、彼らそれぞれの性格をみていきたいとおもいます。