その5 です。
このペースで書いていったら、一体いつ終わるのであろうか??
ともかく
S60
銀座の喫茶店シーンのつづきです。
ここは会話も「○」だらけです。
新婚旅行は雨に降られちゃったので
旅館で旦那とコマを回しっこしていたという……
高子「コマ?」
マリ「うん。あるじゃない。ホラ、国旗かなんか描いてある……あれ廻しっこしてたのよ」
アヤ(横から)「あ、そう」
コマ、廻しっこ→「○」
あと「マリ」なる役名も「○」っぽい……
ま、ここはなんとなく性的なほのめかしも感じられますが……
(だから? アヤが機嫌が悪くなる)
にしても……
原節子&淡島千景
淡島千景は独身を通して亡くなったし……
原節ちゃんは、まだご存命なんでしょうか??
独身ですよね。
小津映画って、たまにこういう予言めいたところがあってコワイ。
戦前は岡田嘉子に関して、こんな予言めいたことやってたし……
えーこのシーンはおっぱい攻撃がしつこい。
鹿だか牛だかの動物のおっぱい。
でも……考えてみると……
女性が4人集まれば、おっぱいは……
「○」……「8」……
……ですよね??
深読み?――
ですか??……
おつぎ、
S61
原節ちゃんがショートケーキをおみやげに持ち帰ります。
ショートケーキ=もちろん「○」
「結婚」=「食べる」を考えるならば
「○」の形のショートケーキは、ま、完璧な食材といえます。
安っさん大好きな「足裏」がようやく登場。
というか大事なシーンまでとっておいたのか??
なんつったって……
おなじみ恋する乙女のポーズ……
手をゴニョゴニョ……
それにボインボインが登場します。
史子「行っちゃいなさいよ。――どうなの? 専務さんのお話――」
紀子(いたずらっぽく)「いいんだって……とってもいいんだって専務さんがおっしゃンのよ」
というのですが、
このはしゃぎっぷりは
「真鍋さん」ではなくて
謙吉さん
矢部謙吉(二本柳寛)のことを考えていますね~
どうみても。
これは、S25 多喜川のお座敷で
紀子「いけないんじゃない、いかないの。いこうと思ったら、いつだっていけます」
康一「うそつけ」
史子「でもお医者さんだけはおよしなさいね」
紀子「勿論よ」
この対話に対応しています。
うそつき紀子です。
なにもかも矢部謙吉にむけて綿密な準備がほどこされているわけです。
あーーーー……すさまじいシナリオだ……
ため息しかでません……
メンバーもあの多喜川と同じだしね。
笠智衆、原節子、三宅邦子。
……にしても笠智衆が襖を音もなく開ける、このショット……
これぞ、映画本来の運動、といったものでしょう。
サイレントでさんざん訓練を積んできた人間にだけが出せる
名シーンといったところか。
S64
で、その翌日、謙吉君のお母さん、たみ(杉村春子)が間宮家をご訪問。
ここで
「省二」なる人物――が、はじめて姿をみせます。
たみ「お宅の省二さんも」
周吉(ふと寂しく)「いやア……あれはもう帰って来ませんわ……」
たみ「でも、このごろになってまたポツポツ南方から……」
周吉「いやア……もう諦めてますよ」
志げ(お茶を出す)「どうぞ」
たみ「はあ……」
周吉「これ(志げ)は省二がまだどっかで生きてると思ってるようですがね……」
終戦後六年。
いまだ行方不明の間宮省二。
ここで観客ははじめて
間宮家の構成人数が「8」だと知ります。
お母さん、東山千栄子の視線の先は……
鯉のぼり。
S65
矢車→「○」&回転運動
鯉の目→「○」
S67
笠智衆が友人の宮口精二と碁を打っています。
碁→もちろん「○」
○だらけのゲームです。
いっぽうそのころ、間宮家では……
S69
ガキども……
頭が○だらけ……
でも
・実=小津安二郎
ということを考えると、
このシーン
映画の撮影現場のパロディのような気がしてきます。
セットの中を縦横にコード類が走り回り、
男たちが「気をつけろ」だのなんだの叫びあっている。
「しょせん、オレのやってることなんてガキの遊びだよ」
そういう安っさん自身の自嘲もこめられているのか??
原節ちゃんが差し入れに来る……
というのも含めて。
ぜんぶ撮影現場のパロディ……
S70
↑注目したいのはココ。
間宮家の引き戸は、開くとベルが鳴るのですが……
(曾宮家同様。というか、歌舞伎の花道みたいです)
原節ちゃんが異様に驚く。
今日は、友人一同が集まる約束をしているのにも関わらず……
この異様な驚きっぷり。
僕は間宮省二のことを考えたい。
――「まさか、省兄さん??」
という驚きである、と。
ちなみに、
紀子が引き戸が開く音で異様に驚くショットは
あともう一つあります。
登場したのはアヤちゃん。
紬のおキモノ。
小津安っさんは結城紬マニアであった由。
南部圭之介と淡島千景の対談「バラ・お色気・芸人のことなど」(「近代映画」昭和二十六年十二月号)の中の『麦秋』に触れた話題で〈ところで貴方のあの彼女ねえ、節ちゃんの家に遊びにゆくでしょ、あの時の着物なあに?/結城です。/あそうか、小津安二郎てのは結城マニアだからね。〉というやりとりがある。
(フィルムアート社「小津安二郎戦後語録集成」435ページより)
S71
『「晩春」のすべて』で、
小津作品の中で「食べる」と「飲む」はまったく違う意味がある。
と書きました。
・一緒に「食べる」のは家族、もしくは将来結ばれる相手と、だけ。
・それ以外の人とは「飲む」だけ。
ただ、小津安っさん、「男の友情」は信じていたみたいで、
「麦秋」の男の子たちは一緒に食べます。eatしてます。
そう考えると、
「淑女は何を忘れたか」
→師弟関係の斎藤達雄と佐野周二が一緒にご飯を食べる。
「戸田家の兄妹」
→佐分利信、笠智衆たち友人と一緒にご飯を食べる。
というシーンがありました。
どっちも家族ではないですね。
でも
安っさんによれば「家族」同様であるらしいです。
S73
間宮家の家紋
「○」が「8」つ、が出てくるのはここ。
S74
で、drinkシーン。
小津安っさん「女の友情」というのは信じていなかったか??
紀子「……いやアねえ……。(気を変えて)ねえ、あとで海行ってみない?」
アヤ「うん、行こうか」
紀子「ね、食べない」
アヤ「うん、食べよう」
といいますが、「食べる」ところは写りません。
S75
ですが、菅井一郎と東山千栄子は夫婦ですので
一緒に「食べる」
上野のトーハクです。
東京国立博物館。
おなじみ(?)ユリノキがみえます。
博物館の本館、この頃は窓があったんだな、とわかります。
今はふさがれています。
東山千栄子の無邪気な笑顔がいいですな~
風船=「○」ですが……
さっきの間宮家の家紋、「○」が「8」つを思い出したいところ。
なんで、東山千栄子のお母さんがこんなに喜んでいるかというと……
この「○」は省二だから、です。
で、
S78
ふたたび間宮家の電話。
康一(笠智衆)が気になる患者がいるので帰れない、といいます。
ここで再び「○」が「8」つ。
杉村春子が登場したS64からここまで
「麦秋」は間宮省二なる……
大きな「○」を中心に動いています。
S79
またまたショートケーキの登場。「○」
ショートケーキがいかに完璧な食材か、というのはS61の解説で触れました。
んーなんですが、
わたくし的には……
原節ちゃんの……お胸の……
セーター越しの……
あれが……
お胸の「○」が気になってしかたないぃぃぃぃ……
ああん、真面目にやってますよ。マジメに。
だって、ね。銀座のカフェの壁画の例もあるわけですし。
おっぱい=「○」ですよ。
そしておっぱいは「結婚」に結びついていましたっけ。
「こんばんは」
紀子「どなた?」
「矢部です」
また引き戸が開いて、ベルが鳴り、
原節ちゃんが異様に驚く。というパターン。
淡島千景が結城紬を着て登場するあそこと同じです。
「ま、まさか、省兄さん??」
でもやってきたのは矢部さん。
二本柳寛。
S80
間宮家最大の「○」――間宮省二をめぐる動き。
ちょっと整理しましょう。
S64―間宮省二の存在が観客に判明する。
S65―鯉のぼりの「○」
S70―引き戸の開く音に異様に驚く紀子
S73―間宮家の家紋 「○」が「8」つ
S75―空飛ぶ風船 「○」
S78―ふたたび家紋 「○」が「8」つ
S79―ふたたび異様に驚く紀子
S80―矢部謙吉、間宮家を訪問
「○」はS75で空飛ぶ風船になって飛んでいってしまいますが、
S80で矢部謙吉に姿を変えて戻ってくる。
そう考えていいでしょう。
そして間宮家の茶の間のテーブルには
立派なショートケーキ 「○」が乗っかっています。
その6につづく。