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今野緒雪「マリア様がみてる」感想・その1

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「マリみて」ですよ。「マリみて」

今頃はまっておりますですよ。

 

まあ、興味がある方はお読みください。(誰もおらんか)

 

いや、でもこれはすごい。

コバルト文庫、バカにすると痛い目を見そうですぞ。

 

結論から言ってしまうと、ですね。

◎「マリア様がみてる」はものすごく

おっさんくさい構造をしている。

ということになりそうです。

 

□□□□□□□□

 

少し前に 吉屋信子記念館の記事とか書いてた頃に

吉屋信子の戦前少女小説にはまっておったのですが。

ふと

「では、現代の少女小説はどんなものなのであらうか?」

などとおもい、色々調べたところ、

 

少女小説界のビッグネームというのは

◎吉屋信子→氷室冴子→今野緒雪

このように、どうやら推移していったらしいのである。

(ものすごい大雑把)

 

で、マジメなトマス・ピンコさん、

「ま、まさか、吉屋先生よりおもしろいなどということはあるまい……」

と疑いつつも

 

氷室冴子「クララ白書」&「アグネス白書」

今野緒雪「マリア様がみてる」

これらを律儀にアマゾンさまで購入……(すべてコバルト文庫)

 

律儀に読んでいったところ――

 

これがものすごくおもしろいじゃありませんか。

 

まあ、順番的に氷室先生の本の感想を先に書くべきかもしれんですが、

目下読んでゐるのが 「マリみて」ですので 「マリみて」の感想を書きます。

 

ちなみに5巻目の「ウァレンティーヌスの贈り物(前編)」を読了した段階での感想であります。

(30何巻かあるらしいのだ……大菩薩峠並みである)

 

□□□□□□□□

感想①メカニカルな文体

 

「マリみて」とは――

名家の令嬢が集う私立リリアン女学園高等部を舞台とし、上級生と下級生がロザリオの授受によって姉妹関係を結ぶスール制度をめぐって、少女たちが織り成す愛と友情の物語。

(東京堂出版「少女小説事典」292ページより)

 

ようするにこんな話だという知識があったので

抒情的な詩的な ひたすら美しい文体で攻めるのかな~ などと漠然とおもっていたのですが、

これが真逆で びっくりしました。

おっそろしくメカニカルな文体なのです。

ま、はっきりいや

男っぽい文体・理系文体

なんですわ。今野先生。

 

わかりやすいのは、ヒロインの福沢祐巳ちゃんが

部屋から突然飛び出してきた 憧れの小笠原祥子さまとぶつかるシーン。

 

「あっ!」

「うわっ!」

 人が飛び出してきたと思った瞬間、祐巳は身体の前面に軽い衝撃を受けた。次いで視界が傾ぎ天井が回って、その後すぐにお尻に激痛が走った。

 その人物は、ドアが盾になった志摩子さんでも、最後尾に控えた蔦子さんでもなく、二番手の祐巳の身体を狙ったように直撃したのだ。

 だから、先の「あっ!」が飛び出してきた人の、後の「うわっ!」というのが祐巳の声だった。

(集英社・コバルト文庫「マリア様がみてる」39ページより)

 

んーなんか交通事故の描写みたいなんですよ。これ。

その直後 祥子さまに祐巳が抱きしめられるシーンも 今野先生の理系文体の特徴が良く出ています。

 

「よかった」

 安堵したのか、祥子さまは祐巳をキュッと抱きしめた。胸に、さっきと同じ圧迫感。ああ、そうか。それは祥子さまの胸の膨らみだったらしい。制服の構造上、体型の個人差は表に出にくいが、お胸はかなり豊かなほうらしい。……なんて考えている場合じゃない。畏れ多くも、今、祥子さまに抱擁されているのだ。

(同書42ページ)

 

おわかりでしょうか?

圧迫感、制服の構造上、体型の個人差、等々といったやけに男っぽい語彙……

理系文体なんですよね。

 

2巻目の「黄薔薇革命」も 「人体=機械」という 理系っぽい男っぽい視線がみえます。

虫歯になやんでいる黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)の心理描写。↓↓

 

 しかし、人間というのは身体の一部に気がかりを抱えているだけで、こうも使い物にならなくなるものか――。

 所詮、人体なんてねじ一つが壊れて動かなくなる機械のようなものかもしれない。いつもは比較的性能のいい彼女は、絶望的なため息をついた。

(集英社コバルト文庫「マリア様がみてる 黄薔薇革命」136~137ページより)

 

おつぎ。この本のメインイベント 心臓の手術を終えた由乃ちゃんと お姉さま令さま との病院でのイチャイチャシーン。

 

「それにしても、元気ね。本当に手術したの?」

「したよ。痕、見せてあげようか」

「……いいの?」

「令ちゃんには見てもらいたい」

 由乃は、パジャマのボタンを全部外して、前を開いた。下着はつけていなくて、その代わりに大きなガーゼが胸を覆っていた。包帯はしていない。

「いろんなものが身体のあちこちに刺さっている時だったら、嫌だったけれど」

 そう言いながら、紙テープをはがす。何重にも重ねられたガーゼをそのままそっとめくると、右胸の下辺りに十センチくらいの傷痕が現れた。

 横に一筋。糸ではなくて、針金みたいな部品で何カ所かをつないであった。由乃の白い身体についた一本の線は、何だか勲章のようで美しかった。

(同書194ページより)

 

ようは、サイボーグなのである。

いや、SFじゃないんですけど。

「マリみて」はサイボーグ少女の物語である、などとポストモダン批評風にみることも可能な書物なのです。はい。

 

ついでにいうと 由乃ちゃんは、「病弱な美少女」という設定ですが、

愛読書は池波正太郎だったりします。(病室に積んである)

とうぜん「マリみて」読者の方だったら

心の中にセクハラ親父が住んでいる 白薔薇さま(ロサ・ギガンティア)・佐藤聖さまのことを思い出すことでしょう。

 

うむ。

◎「マリア様がみてる」はものすごく

おっさんくさい構造をしている。

冒頭に書きましたこれ、思い出していただくとありがたい。

 

なんだか 文字数制限がどうたらこうたらいうので

その2につづきます。

 


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