Quantcast
Channel: トトやんのすべて
Viewing all articles
Browse latest Browse all 593

夏川静江/竜田静枝(戦前の女優さん)・ドルニエDoX(飛行艇)

$
0
0

前回に続き、めちゃくちゃな内容。

前回に続き、1920~30年代のおはなし。

 

さいきん、妙に「夏川静江」さんの名前を目にするな、とおもったわけです。

まず、小林彰太郎「昭和の日本 自動車見聞録」(前回に続き、登場) 114ページ。

 

15型ロードスター(ダットサン)と夏川静江嬢。年代はわかりません。

30年代というのは確実ですが。

 

夏川さんの愛車です。とかいうことではなく、広告のモデル、ということだとおもう。

この文章の感じだと。

 

つづいて、これまた前回紹介した 教育評論社「東京名物食べある記〈復刊〉」66ページ。

今も残っている名店・根岸「笹の雪」の紹介で、

……桃割れの、久夫曰く「夏川静江に似ているね」の小女

という女性が登場する。

 

久夫というのが挿絵担当で、その「夏川静江嬢」の絵がこちら↓↓

 

それから、日本放送出版協会「懐かしの復刻版 プログラム映画史 大正から戦中まで」なる本にも……

まあ、これは映画の本ですから 当然といや当然ですが、夏川静江さんは登場します。

 

133ページ、アンニュイな表情がなんともセクシーな夏川静江嬢です↓↓

 

「人形の家」

どんな映画かまったくわからんのですが、ジャッキー阿部監督 岡田時彦主演というのだから一流なのでしょう。

あと浦辺粂子さんの名前も見逃せないところ。

 

ちなみにこれは 神田日活館という映画館の出していたパンフレット「神田週報第四十四號」昭和2年9月15日発行。

というから 1927年か。

 

今なら映画の本編の前に、うんざりするほど予告編が流れますが、

当時は印刷メディアで予告をしていた、ということなのでしょう。

 

つづいて、260ページ

熊本世界館「世界館週報」昭和10年3月26日発行。というから1935年です。

 

左上大きく横顔が夏川静江さん。

引き続き第一線で活躍されていることがわかります。

 

これまたどんな映画かわからんのですが、小唄勝太郎さんというのは当時かなりのビッグネームだったはず。

あと、一番下に写ってる 伏見信子さんは 小津の「出来ごころ」のヒロインでした。(松竹から移籍したのだとおもう)

「音楽映画」というから、時代はもうトーキーだったわけですなぁ。

つまり、夏川静江さんはサイレントからトーキーの変化もなんなく乗り切った、ということでしょう。

 

まだまだあります。夏川静江。

「富士週報第百九十二号」 これは浅草の富士館という映画館がだしていたパンフレットらしい。

年代がよくわかりません。昭和5、6年 1930、31年というところか。

 

モデルさんの名前がクレジットされていないので確実じゃないんですが、

この方は↓↓ 夏川静江さんではあるまいか??

 

ちなみに目薬の広告? なんだとおもう。

世界的美眼薬スマイル云々……と書いてあります。

どういう効果があるんでしょうね???

 

以上、夏川静江尽くしだったわけですが――

なんとなく推測できるのは……

①相当に有名な女優さんだった。

②「美人」の代名詞的な人でもあった。

というところでしょうか。

 

この流れで、ですね……

朝日新聞社編「アサヒグラフに見る昭和の世相1」180ページ。

昭和4年10月23日号をみますと――↓↓

 

モガ三味

ジヤズ模様のスウエーター、人絹(?)の靴下の膝をくづして、お三味線を稽古遊ばすは、これなん蒲田のスター静枝さん!

撥さばきの、なんとギターめいてゐることよ、

 

――というので、ははん、またまた夏川静江か。

なるほど、ちょいと「イキ」ですな。

などとおもったわけですが……

 

よくよく上の文章を読み返しますと

「蒲田」「静枝」……??

 

夏川静江って、松竹の人なのか?

松竹の女優さんならば、なぜ今まで認識しなかったのだろうか?

(小津・清水作品になんらかの形でかかわっていてもおかしくないが、

ついぞ夏川静江の名はみたおぼえがない)

そして「シズエ」の字が、微妙に違う……

そういうわれると、顔も……なんか違くないか??……

 

この三味線の女性が、はたして「夏川静江」なのか、どうか?

確かめるために――

 

教養文庫、猪俣勝人・田山力哉「日本映画俳優全史・女優編」にあたってみましたところ……

二人のシズエがいたことがわかりました。

 

まずは 夏川静江。31ページに登場↓↓

 

日本映画最初の純情女優がこの人だ。岡田嘉子が妖艶なら、この人は清純、もっとも女優らしくない女優だった。

明治四十二年三月九日東京芝区生れ、……

 

もう一人は 竜田静枝↓↓

ちなみにこの本は、「第一部」「第二部」の二部構成になっていて、

第一部はスター中のスター、ビッグネームだけが選ばれていて、

第二部は、その選にもれた感のある人がまとまっている。

 

夏川静江は、文句なし「第一部」の女優さんで

(並びでいうと、岡田嘉子→夏川静江→伏見直江→水谷八重子……という感じ。ビッグネームしかいない)

竜田静枝は「第二部」の女優さん。

だから、大スターにはなりそこねた人、という扱いなのだろう。

そして 夏川静江→日活 竜田静枝→松竹 ということもわかる。

 

「竜田静枝」の項目。

引用しますと――(249ページ)

 

彼女のやや媚びをたたえた明眸、心持ちそり気味の上唇、白い肌、それは当時の男性ファン憧れの性的魅力だった。彼女の全盛時代はそうしてつづいた。ことに島津門下の新鋭監督・豊田四郎の「彩られる唇」「都会を泳ぐ女」での彼女は新しい時代の魅力をスクリーン一杯に漂わせて、まさにアメリカのイット女優クララ・ボウに匹敵したといえる。しかも一歩もその魅力にひけをとらなかったといってもいいだろう。

 

ということで、和製クララ・ボウみたいな存在だったのだろうな、ということがわかる。

 

「蒲田」で「静枝」――というから、

あの「アサヒグラフ」の三味線の女性は、この竜田静枝さんで決まり、でしょう。

今の目から見ると、なんということもないポーズですが、

昭和初めの目からみると、膝小僧出して三味線なんて……

という、ちょいとセクシーな写真だったのかもしれない。

 

竜田静枝。松竹の女優さんなら、小津とのかかわりはどうだったのか?

で、ざっとみましたところ、小津作品にも出演していました。

 

「結婚学入門」(1930)→竹林峰子役、高田稔の妻という役どころらしい。

「お嬢さん」(1930)→不良マダム役。

と、どちらもプリントが失われた作品で、これではトマス・ピンコが知らなかったのも無理はないです(笑)

 

あと清水宏作品にも出てたようで

フィルムアート社「映画読本 清水宏」118ページに 「混線二タ夫婦」なる作品が紹介されております。

 

どうも、この竜田静枝は 山形出身で訛りがあって

トーキー時代には活躍できなかった模様です。

 

というか、動く夏川静江は見てみたいものです。なにかで見れるのかな?

最後に、佐藤忠男御大の 夏川静江評を引用しておきます。

 

 夏川静江は、岡田嘉子と対蹠的に純情可憐型で売り出された。ただし、それまでの純情可憐タイプの女優が、可愛らしいだけで自己主張の弱い感じが多かったのに、彼女には近代的で知的な雰囲気があって、モダーンなメロドラマに活用された。

(岩波書店、佐藤忠男著「増補版 日本映画史Ⅰ」261-262ページより)

 

□□□□□□□□

後半、がらっと話題が変わりまして、飛行艇DoX君のはなし。

アサヒグラフの復刻版をみてまして、どうしても気になってしまいまして――

 

「アサヒグラフに見る昭和の世相1」p163

昭和4年8月21日号ですが……↓↓

 

百人乗の旅客水上機

ドイツ人の理想とした世界一の大飛行機、百人乗り旅客水上機ヅクス號は、ボーデン湖畔のドルニエ工場で二年間秘密裡に建造中の處、七月九日はじめて公開された。総頓数五一頓。長さ四一米、高さ一〇米、両翼の幅四一米、三層建で五二五馬力のエンヂン十二個を備へ、一時間二五〇キロの速力といふ怖ろしい怪物である

 

正直、ドイツにはあまり好感をもっていないわたくしですが……

ドイツ人が考える、または実行する奇想天外なことは心底すごいとおもいます。

 

このDoX君もまた、バカバカしいというか、なんというか――これは好きです。

 

このエンジン12個の化物DoX君が、ですね。

「アサヒグラフに見る昭和の世相2」p57に再登場いたします。

昭和6年9月30日号。

 

紐育のドツクス

大西洋横断に成功したドルニエ・飛行艇ドツクス號は八月廿七日紐育へそのさつそうたる姿を現した。この独逸文化の最高水準に対して、紐育の摩天楼達は之又アメリカ文化の代表顔をして出迎へて居る

 

「ヅクス號」といっていたのが 「ドツクス號」になってますが

DoXの ドイツ語読み、英語読みの違いなんでしょうかね?

 

もとい、ツェッペリン=飛行船は今でも有名ですが、

この頃は「飛行艇」の時代でもあったのだな、ということを認識いたしました。

 

当時……

・飛行場が未整備だった。(客船のように港に着陸する方が効率がよかった)

・エンジン出力および信頼性が低かった。(いざというときは着水すればよい)

ということで 飛行艇が選ばれたようです。

 

DoX君&摩天楼。

この写真はいいなあ。部屋に飾りたいくらいですなあ。

 

手持ちの本だと

クレオ社、白井成樹「飛行機 大空の冒険者たち」という

画集のような図鑑のような本にもドルニエDoXは載ってました↓↓

 

ネット情報ですと、飛行中、えんえんエンジンの面倒をみていなければならない、とかいうとんでもない状況らしく、

↑の紐育の写真なんか、いかにも

「成功しました!」という感じですが、

 

七か月間、修理のためにニューヨークにいた、ということで、

まあ、はっきりいうと使い物にならなかったようです。

 

いいなあ、DoX君。

ドイツ人が無様に失敗するのっていいな。

 

このめちゃくちゃ感。

なんかワーグナーとかニーチェとかの系譜上にありますな↓↓

(ものすごいボンヤリした印象(笑))

 

そのあと、このDoX君をいろいろ調べたのですが――

 

・プラモはアマゾンで買える。でも高い。しかも昔のキットで組みづらいらしい。

・シュライバー社のペーパークラフトモデルがあるらしい。

・新千歳空港・ちとせ大空の夢アミュージアム、なるところにDoX君の精密模型が展示されているらしい。

 

などがわかりました。

シュライバー社のペーパークラフトはそのうち欲しいです。

あと新千歳空港、というと 「水曜どうでしょう」の旅の出発点としてしか意識してなかったのですが、

そんなおもしろそうな施設があるとは知らなんだ。

DoX君に会いに行ってみたいものです。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 593

Trending Articles